#13 池袋のボーイ達

ここでリクエスト頂いていたボーイについてお話したいと思います。

池袋のお店での出来事です。


登場人物

〇店長(28)

ランキング上位のキャストの担当管理、キャッチ。

見た目はTheチャラ男。ホストのような見た目だが顔面偏差値が低すぎて決してホストにはなれない。


〇スカ男(27)

店長の手下。何でも屋。担当キャストは なこ1人。主にキャッチとウエイターをする。

見た目はいしだ壱成を50発殴ってラリアットを30回した顔。パッと見サラリーマン。

店長に拾われた事から店長に逆らう事が出来ない。

なこをスカウトした男。


〇たっちゃん(28)

ほとんどのキャストを担当管理。スカウト、キャッチ、ウエイターなどマルチにこなす。

見た目は元TOKIOのYメンバーにそっくり。眼鏡をかけている。

たっちゃん無しには店は回らない。


〇じゅん(年齢不詳)

付け回し担当。お客、キャストの様子を見てどこでチェンジするか、全体の雰囲気を確認する大切なお仕事をしている。

見た目は「北の国から」のじゅんにそっくり。

キャストからは気持ち悪いと嫌煙されている。



ここからはショートストーリー。


☆なこと店長の関係性

「なこちゃんおはよ~!今日も可愛いね〜」

「店長は今日もチャラいっすね」

「やめてよ〜俺は真面目だよ〜。なこちゃんもっと指名取れるでしょ〜頑張ってよ〜」

「うっす」携帯でゲームをしながら。



☆たっちゃんに逆指名

池袋駅を出て繁華街の入り口にたっちゃんを見つけた。

「お兄さん、同伴しない?」

「は?ってなこさん!いきなりやめてよ」

「こんな早くから精が出るねぇ」

「仕事だからね〜。俺も歳だからそろそろ辛いわー」

「まだ20代じゃないの」

「いやマジで夜キツいんですって。刑務所のがよっぽど健康的だよ。朝早く起きて夜眠れるんだよぉ」

「確かにねぇ。万引きでもしたら〜ふふっ」

「それ入れない奴でしょ!」

「頑張れ、たっちゃん(ガッツポーズに満面の笑み)」

「もー早く出勤して!」



☆じゅんとなこのコンビネーション

他のキャストはじゅんの事が嫌いだ。

でも私はじゅんの事は嫌いじゃない。むしろじゅんと話すのは結構楽しい。

待機席

「なこさんお願いします」

立ってじゅんの所まで行く。

「じゅん、おはよう」

「おはようございます。なこさんご機嫌は如何です?」

「良いわけない」

「ふふっ、ちなみにこれ締め(終了時間)のお客ですけど延長取れます?」

「延長取りたくて呼んだんでしょうが」

「お察し頂き僕は嬉しいですよ」

「私は普通に嫌だよ」

「またまた、そう言いながら延長取るでしょ。行きますよ」

ちゃんと延長取りました。

じゅんは私に合うお客を選んで合ってると思うと付けてくれるし、合わない場合は予めちゃんと言ってくれるので、気の合う付け回しでした。

アイコンタクトで私がこの客無理っていうのも分かってくれたし。



☆たっちゃんはジェントルな男

私は珍しく酔っ払ってしまった。

たまたまスカ男が居ない時でたっちゃんが面倒を見てくれた。

「ねっむい…マン喫行って寝るわ。じゃーねー」

「待って、送りますから」

「いいよ、別に1人で行けるし」

「なこさんに何かあったら俺スカ男に合わせる顔がないんで」

「大丈夫だよ、適当に言っとくし」

「ダメ!はい、行きますよ」

たっちゃんはなんとマン喫の中のレディースルームのドアまで送ってくれた。真面目な男である。




☆数年後の事

私はお好み焼きを焼いていた。

20代になった私は久しぶりにスカ男から連絡を貰って飯を食いに行こうと誘われたのでスカ男の車で上野辺りをドライブしてお好み焼き屋に来ていた。

「お前は変わらないね」

「スカ男は年取ったね」

「お前のそういう所が俺はある意味信用出来るよ」

「わたしうそつかない(カタコト)」

「嘘つけ!女子高生キャバ嬢」

「ふふっ」

「俺あの時店長にめちゃくちゃ怪しまれてたからね」

「年齢詐称なんてやめておけばいいのに。拾っちゃうから〜良くないね。そんなんだから店長に良いように使われるんだよ」

「だってお前やるっていうし!店長から身分証突っ込まれて急いで買いに行ったんだから」

「私はスカ男がどれだけ私を守ってきたかは分かっているつもりだよ。昼職に就いていれば結婚してやってもいいのに、バカめ」

「俺は無理だよ。もう抜け出せないよ。店長も色々問題だらけな人ではあるけど俺が居ないとあの人死んじゃうからね。お前には幸せになって欲しいよ」

「そうねぇ。どうだろうね。まぁ頑張る」

「まぁお前がキャバ辞めてよかったよ。お前向いてないから!マジで!」

「そんなもん分かっとるわ!ところで池袋のキャストさん達はどうしたの?」

「あーお前の大好きな優さんは実家帰ったよ」

「えっ、新宿の超人気店にいるって聞いたけど?」

「その後かな?鬱かなんかになって実家戻ったらしい」

「あんなに可愛くても病んでしまっては難しいね。サラさんは?」

「サラさんはヤクザの下っ端と付き合っててそいつがムショ入りして出てくるの待ってるみたいよ。まだ夜はやってるんじゃない」

「あー、何か分かるわぁ…」


私達は思い出話しながら最後の晩餐をした。

これが私とスカ男が会った最後だった。

多分スカ男は私の事を心配して呼び出したのかなと思った。

私とスカ男は同じ秘密を共有してきたから信頼関係もあり兄妹のような関係だった。

後から聞いた話だと私はたっちゃんの担当になる予定だったらしいが、スカ男が自分の担当にして欲しいとかなり店長に掛け合ってくれたそうだ。

結局池袋のお店は私が辞めた後にすぐに潰れて、1度再開したものの、キャストも集まらず客も来なくて潰したらしい。

その後もスカ男は店長と共にグレーなんだか、ブラックなんだか詳しくは知らない仕事をしていた。

スカ男とはそういう奴なのだ。


私はスカ男が今幸せに暮らしているといいなと思いながらこれを書いている。

もう二度と会うことはないけれど。



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