#11 池袋編

私は女の子から店長の話を聞いていた。

「この前お店の前で暴れ回ったらしいよ。そこのコンビニのガラス割ったんだって」

「なにそれ?どういう事?」

「酔っ払ってたんじゃない?ホントバカだよね〜」

「ウケるね」

嘘だ。全然ウケないし、笑えない。


実は私は入店当初から店長の事は警戒していた。

確実に良からぬ何かをやっている。目つきが明らかにおかしい。


凛ちゃんに聞いた。

「アレはシャブかな?」

「いや葉っぱだと思うけど、下手したら両方じゃないの」

「それはヤバいねぇ。歌舞伎町か。どうしようかなー」

「Aって人気店なんだけど知らない?雑誌にも載ってるよ」


豆知識だがキャバクラ専門誌というのがある。小悪魔agehaの地域版だと思って頂けると良い。

選ばれしキャバクラ、選ばれしキャバ嬢のみが掲載されるのでこれを指標にする子は多い。


「なこちゃんここより時給上げて貰えるようにしてあげる。友達いるから話しとくよ。私今日で飛ぶ(バックレ)からさ、来る時は連絡して」

「分かった。行く時は連絡するね」

「先行って待ってるから。ここは優ちゃんが店長とデキてるし、客層悪いもん」

「あーそうだね」


そんな気はしてたんだ。

優さん趣味悪いなぁと思いながら煙草の火を消して、移店について考えた。

ここのお店にはだいぶ居すぎてしまったし、私的にもそろそろお店を変えるのは賢明な判断かもしれない。


メイクポーチの事件で誰も信用は出来ないし、最近は新規の客が少なくなってヘルプに回されることが多かった。

実際客層も悪いのは事実。私はほかのお店を知らないから我慢していたけど、品の悪い客や明らかに黒い組織の人達がここの所出入りしていて、それは店長経由の客だった。

そういう輩に限って飲め飲めと潰しに掛かってくるのでお酒の飲めない私にとっては嫌な客でしかなかった。


翌日、凛ちゃんは消えた。

キャバ嬢が飛ぶのなんて日常茶飯事の事なので誰も気にもとめない。


数日後

着替えとメイクを済ましてそろそろOPENの時間だった。

エレベーターの前に居たら男性が1人入ってきた。

「いらっしゃいませ、今ボーイをお呼びしますね」

「客じゃないよ、警察。店長いる?」

「かしこまりました。少々お待ち下さい」

早足でボーイを呼びに行った。

「ちょっと、警察来てるよ。早く行って」

「あーそうですか。分かりました」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る