#9 池袋編

入店して2ヶ月半が経った。

私はお酒が苦手だ。美味しくない。気持ち悪くなる。

この頃の私は自分がアルコールアレルギーである事を知らない。

お酒は入れるふり、頂いたカクテルドリンクはもちろんジュースだ。

たまに「本当にお酒入ってるの?」とかいう輩がいる。酷い時は勝手に飲んで確認するような不躾な客がいる。

酒が入っていようが入ってなかろうが貴方には関係がない事なので是非やめていただきたい。



さて、私の出勤は早い。

OPENの大体2時間前、ボーイがおしぼりをくるくる巻いている段階から私は居る。

レンタルのドレスは早い者勝ちだからだ。

サイズや色、形などは自分をよく見せられる武器であるからきちんと選び、それに合ったメイクをしなければならない。


私は週3日出勤なので女の子達と話す時間が少ないから、早く行って女の子達との親睦を深めたい狙いもあった。


ドレスを選んでお店でメイクをする。

メイクをしながら女の子達と話して情報を得る。

どんな客が来ただとか、店長やボーイが何をしただとかそういう情報は意外と大事である。

あとは聞ければ指名客についても聞く。ヘルプにつく時役に立つ。


如何せん女性から嫌われやすい性格なのは自覚しているから、キャスト達と仲良くする事を重要視した。


その甲斐あって私は円滑にみんなと話せるようになった。

NO.1の優さんは同い歳の新人という事で可愛がってくれたし、サラさんは良いお客様だとアフターに連れて行ってくれてカラオケや美味しいご飯に連れて行ってくれた。

他にも年上のお姉さんとは共通の趣味の話をしたり、酔っ払って辛そうな子を優しく介抱し、騒いでいる子とは一緒に騒いではしゃぐ。

ベロベロに酔っ払っている子からふざけてキスされたりした。

そういう時はお祭り騒ぎである。

私はすっかり夜の世界に麻痺していた。

嫌なお客も居るけれど、ずっと学校に馴染めなかった私にとってはまるで女子高に居るみたいにとても楽しい時間だった。


売上ランキングは7位。

私は何とか地位を手に入れた。


「なこ、おはよー!今日も早いね」

「おはよー!つい早く来ちゃうんだ〜えへ」

既にお店には数人の嬢が出勤していた。

私は仲良くなった女の子の話を聞いていて面白い話だったので終始ずっと笑っていた。

「あーウケる。ほんと〇ちゃんのお話は面白いよー」

「何でよ〜なこちゃんそろそろメイクしなさい」

「はいはい〜ポーチ持ってくるね」


更衣室にメイクポーチを置きっぱなしにしてしまった。

取りに行くと…ない!

私は至る所を探した。ゴミ箱も探した。

ヤバい。

私のメイクポーチがない!

ここに置いたのは間違いないのだ。



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