#7 池袋編

入店して2週間目。

すっかり私は馴染んでいた。

女の子達とも徐々にお話出来るようになって、なこちゃんと呼んでくれるようになった。


今日はOPEN後の出勤。

更衣室が狭いから少しズレての出勤だった。


既にお店はお客様も居て賑わっていた。

早速ボーイに呼ばれると

「なこさん…あの申し訳ないんですが、かなり気難しいお客です。いけますか?」

「へー別にいいよ」


実際行ってみると見るからにThe頑固親父。


とりあえず話しかけてみた。

「どこかで飲んで来られたんですか?」

「うるせー関係ないだろ」

「確かに関係ないですね」

ちょっと笑ってしまった。


煙草を出したのでライターを取り出し火を付けようとする

「おい、やめろ!人に火を向けるな」

「それは失礼しました」


じゃあお酒でも作ろうかとグラスを取る

「まだ飲んでるだろ、勝手に取るな」

「えーっと、そんなに怒って何かありましたか?」

「うるさいな、俺はお前みたいにぺちゃくちゃ喋る女は嫌いなんだよ」

「うーん、嫌われちゃったら仕方ないですねぇ」

「お前は黙ってろ、何もするな」

「そうします」


おい、ジジイ帰れ。何しに来た。

私はボーッと宙を見つめる。

フリーのお客様の場合は大体15分〜20分で引き抜かれるので待つしかなさそうだ。


するとボーイから早々に呼ばれた。

まだ付いて10分も経っていない。


「ヤバかった?呼ぶの早くない?」

「なこさんに場内指名なんですけど」

「は?誰?知ってるお客なんていないよ?」

「いや僕もよく分からないんですよ。常連客でもなく、フリーのご新規なので、とりあえず行って聞いてみてくれる?間違いかもしれないし」

「うーん…分かった」


訳が分からない。付いてもいないのに何故?

稀にNO.1は誰?じゃあその子で!みたいな事はあるが、私は普通のキャスト(嬢)

ボーイの言い方からイレギュラーな事態なのは察していたので、私は不信感でいっぱいだった。


とりあえず席には座らずしゃがんでお客様に話しかけた。

「こんばんは、なこです。あのご指名を頂いたと聞いたのですが…初対面…ですよね?」

「そうだよ、驚いたでしょ。まぁ座ってよ」

40代くらいの紳士な雰囲気の方だ。

「あのどうして私はご指名頂けたんですか?とても不思議で…」

「キミついさっきのお客さん嫌そうにしてたから呼んだの。大変だったみたいだね」

「あぁー見られてたんですか。あれは私がじゃなくて、お客様の方が私の事を気に入らなかったみたいで…嫌われちゃったみたいなんですよ」

「何でだろうね、なこちゃんいい子なのにね」


何だこの人、めちゃくちゃいい人じゃん!



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