#5 池袋編 体験入店④
「失礼します、こんばんは。なこです」
精一杯の笑顔で挨拶した。
サラリーマン4人で既に酔っ払っている。
そもそも酔っ払ってないと来ないだろうというのは後から知った話。
担当するお客様の隣に座った。
30歳くらいの男性だろうか。酔っ払ってるし、何だかやたらと元気がいい。
どうしよう…何を話そう。
「なこです、こんばんは〜宜しくお願いします」
「こんばんはーなこちゃんね。いくつなの?」
「18です」
「へぇー若いねー。お水は長いの?」
「あの…私、今日キャバ嬢初めてなんです」
「えっ?本当に!?今日からなの?」
私は掴みはOKかな?と思ったので、困り顔で話を続けた。
「実はお兄さんが初めてのお客様なんです、だから何を話したらいいか…慣れていなくてすみません」
私は手で顔を被った。すると、
「おーい!みんな、彼女今日キャバ初めてなんだって!なこちゃん!歓迎してあげようぜ」
「本当に今日から?凄いじゃん!レアだなぁ」
「新人さん頑張れ〜」
無事に盛り上がったので一安心。
「皆さんありがとうございます」
「大丈夫だよ〜楽しく飲もうよ」
「本当に凄く緊張していたんですけど…。お兄さんみたいな優しい方が初めてのお客様でホッとしました…」
「なんで?もっと怖い人が来るかと思っていたの?」
「いえ、キャバクラに入るのも初めてなので…どんな方が来るか予想も出来なくて…本当に今安心しました…良かった」
胸を撫で下ろす仕草をする。
すると、ウエイター担当のボーイが回ってきたので、お客様が呼んだ。
「ボーイさん来てー、俺この子場内指名ね」
「えっ!私ですか?指名ですか!何で!?」
「今日初日で俺が初めてのお客さんの記念だよ」
「そんな…悪いですよぉ」
「あーでも俺は今日たまたま会社の飲み会でさっきキャッチのお兄さんに連れてこられただけで、普段はキャバにはほぼ来ないから、お客さんにはなれないけどね」
「えっ、いやビックリです!嬉しいです!」
これが私の初場内指名。
場内指名とはフリーで入店したお客様が気に入った子をその場で指名できます。
続
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