第11話 オレ達と2年生の勝負 ――宣誓
◆
「えー、予定より5分程度、先輩の不甲斐無さのせいで遅れましたが、皆さん、こんにちはー。1年生側の実況の轟悠一。轟悠一。彼女募集中です。宛先は直接本人まで!」
午前10時5分。
ぼく達の教室にもテレビがあるのだが、その黒い筐体の画面に、すぐそこにある見覚えのある顔が映る。つまりは、悠一とカメラマンがこの1年1組の教室に来ている、ということ。
そのカメラの後ろにて、ぼくは成り行きを見守る。
「はてさて、今回、私達は2年生に宣戦布告しました。その勝負の内容などは、配布物として皆さんにお配りした通りです。ほとんどの人がゴミ箱に放り込んだ、あの分厚い書類です。この野郎。どれだけ作成に時間を掛けたと思っているんだ! 一晩でやってくれたんだぞ!」
あちこちで笑い声が聞こえた。
「ま、愚痴はこの程度にして、そろそろ勝負を始め……って、おれが言っても締まりがないので、ここはおれ達の宣戦布告の代表者、獅子島詩志の言葉で始めましょう。改多、動いて」
「おい、悠一。その前にヘッドマイク貸せよ」
「なくても大丈夫だよ。これ、飾りだし」
「そうなのか」
テレビ画面からゆっくりと悠一の姿がフェードアウトし、教卓に乗って足組みをして憮然としている小さな大将の姿が映し出される。
「代表の獅子島詩志だ。ぐだぐだ話しても無駄なので、早い所始めようか」
詩志は教卓から飛び降り、右手を静かに挙げる。
「これから宣戦布告に則り、我々は2年生に勝負を挑む」
堂々たる様で宣言した。
あちらこちらで形式的な拍手が鳴り始める。囃す声も聞こえてくる。どこからか指笛も耳に入ってくる。恐らく2年生だろう。
ついに文字通り始まったのだ。
ぼく達の勝負が。
「――だがな」
そこで突如、挙げていた右手を下ろし、詩志は人差し指を天に向ける。
「一つだけ、言わせてもらおう。2年生の愚か共よ」
天に向けていた指を、カメラに突きつける。
「お前達は、きちんとオレ達が提示した書類を読まなかっただろう。なんせ、代表さえ読まなかったんだからな」
ざわめきの声が聞こえてくる。
「それが致命傷だ。仇となる。準備段階でお前達は既に負けているんだ」
詩志の言葉と共にざわめきが大きくなり、学校中に響き渡る。
そんな中、カメラに映るその問題発言をした張本人は、まるで舞台演劇のように大きく両腕を翼を開くように広げ、
「2年生は笑えないが、ここに集まった皆の衆。良かったな」
その表情に悪魔の笑みを宿して――次の言葉を告げる。
「今日は、午前中で帰れるぞ」
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