第3話 そもそも、理想のタイプって?

 「この先は生々しくなりそうだから、ここらでお開きね」

 悪友のその一言でふいに飲み会は終わった。


 それでいて、

 「いい!!ベタでもいいからあんたなりの『キュン死にシチュエーション』を考えるのよ」

 と最後まで親身に助言をするあたり、いい奴なんだか悪い奴なんだか……


 キュン死にシチュエーションなどと言われても、色恋からすっかり遠ざかった身としてはいまいちピンとこない。

 帰り道に立ち寄ったコンビニで安っちい恋愛雑誌をパラパラとめくるが、酒で高揚していた気分が一気に萎えるだけだった。

 雑誌にあるような恋愛が我が身に起こるとはどうにも想像がつかないのだ。


 ああ、いかん。これではこれまでとなんの変化がないことになる。


 しかし、好きなタイプって、これが一番難しい。

 だいたい昔からいつも2パターンが頭に浮かぶからだ。

 なんともステレオ的な感じだが。



 ・知的でクールなメガネ君タイプ

 ・無精髭のワイルド系なイケオジタイプ



 これが全くの別のタイプだから困る。

 系統が近ければ「好きなタイプ」を聞かれても答えようがあるというものだが、そうじゃないから毎度言葉に窮するのだ。

 さらに困ったことに、どちらも軽〜いノリの好きなタイプじゃないのだ。マジで、心底、ドン引きされるくらい真剣に好きなタイプなのだ。あまりに系統が違うので、イケオジをタイプブラックと呼び、メガネ君の方をタイプホワイトと名付け、人に話すようにしている。

 それくらい、タイプは違えどもどちらも甲乙つけがたいほど、「好きー!!!」となっちゃうんだよなー。


 ホワイトとブラックではあまりに人物像が異なるため、実は私が二重人格とか、1つの肉体に魂が2つ入ってましたとか、そんなオチがあるのではないかと疑ったくらいだ。

 いくらなんでもその発想はファンタジー過ぎるので、一応却下した。



 さて。

 ホワイトとブラックの詳細についてだ。

 どちらも、マンガやアニメや小説でよく見るタイプでもある。

 メガネ君もイケオジも、下手すれば1つのジャンルとして成り立つくらいだし。


 ここでホワイトとブラックの詳細を説明しようとして、ふと気づく。

 キャラクターに特徴はあるし、その持ち味の発現の仕方はさまざまなだけど、ホワイトとブラックに共通して持っていてほしい要素がある、ということに。



 オンナに無関心ってわけでもないし、そりゃキレーなねーちゃんに言い寄られたりしたら悪い気はしないけど、色仕掛けにほだされるほどバカでもない。

 かといって。

 恋愛の達人とか恋人に事欠かないというわけではなくそこは基本不器用だから、自分が想いを寄せる相手にはからっきしだったりする不器用さがあったり。

 自分の使命とか成したいこととかが明確でそれに向けて行動することに忠実。だから、雑念に左右されることもない。

 つまりは、それくらい揺るがない自分を持っているということ。

 実はシャイのため普段はあまり存在感を出さないし、目立つことや注目されることを煩わしく思ってる。そのため、必要なことは話すが普段からベラベラ喋る方ではない。



 こうして考えを突き詰めアウトプットしてみてはじめて、自分が思っていた以上にそこにこだわっていたんだーと知る。


 その上でなおかつ。

 ホワイトにもブラックにも「私を面倒がらない人」という要素を加えたい。


 あ、いや。

 こんなことを言ってしまうと、私がまるでとても面倒な人間のように聞こえるが……

 自覚としては多分「平均」の範囲にはいり、決して過度に面倒な部類ではないと思っている。


 私の、趣味も入った与太話を興味深く聞いてくれたり、仕事や人間関係の愚痴も聞いてくれたり。

 その上でダメなところはきちんと叱ってくれたり、諭してくれたり、議論してくれたり。

 

 オンナの愚痴を嫌う男性も多いのはわかる。

 私自身も、オンナではあるが「女子トーク」についていけず辟易した覚えもあるし。

 オチも悟りもない時間の浪費でしかない愚痴を聞きたくもないという考えは、別に男だけでなく万人共通ではないかと思う。

 だから、私の話をきちんと聞いてほしいって思うこの心境は、「私を私として見てほしい、一般論で括らないでほしい」という思いからだ。


 こうしてみると、私。

 ホワイトさんにもブラックさんにも、オンナとして扱われるより「ヒト」として扱われたいのだろうか?


 あ、いや。

 普段は、良識ある彼らには対等な人として接してほしいんだけど、ここってところでは女性として扱われたい願望もしっかりとあるわけで。


 と、まぁ。

 こんな人が身近にいてほしいし、出会いたいと思ってる。

 しかし、当然身近にはおらず、これまでの人生出会いもしない。

 もしや日本人にはいないのではないかとすら思え、日本語ペラペラの外国人がいいと考えてしまう始末。


 なんだか、本末転倒感があるのは否めない。

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