第2話 そもそも理想のタイプって? −声編−

「そもそもさー、どういう人がタイプなわけ??……まだイケメンってくるんかい?」

「そこまでイケメンイケメンって言ってないし思ってないよ。いつも言っているのは私的にイケメンってだけで」

「そこなんだよねー。私的にとか私よりとか、それがあいまいすぎて神様も引き合わせられないんじゃないの?」


 なるほど。


「第一、イケメンったってそれも人の好みによるでしょ。前も話したと思うけどさ、あんたと私の顔の好みって違うじゃない?うちの旦那の顔は私は全然OKの部類だけど、あんた的にはイケテナイんでしょ?」


 うん、まぁ……


「まずは、そのあたりから細かく設定していったら?」

「そういったって。具体的に設定してもその通りの人になんて出会えないし、これまで好きになった人って得てして自分の外見の好みとは違ったしなー。そのことに意味があるのかって思うんだよなー」


 あ、友人の眉間になんかアオスジがみえるような。

 そもそも私のこんな話題にきちんと向き合ってくれているのはありがたいことだもんな〜。

 ……ただ、面白がっているともいうかもしれないけど……


「あ、えーと。外見を今考えることはちょっと難しいしぱっとでてこないけど、声なら言えるかも……」

「そういえばさっきも声がどうのっていってたね。で、どんな声がいいの??」

「なんていうか、柔らかで知的さも兼ね備えた色気のある声がいい!」

「ずいぶん盛ったね〜」

「や、そういうけど声大事よ!どんなに外見がよくても声がミスマッチだったら100年の恋も冷めるっていうくらい声は重要な要素よ!!」

「ふぅん、で、具体的にはどんな声なの?」

「そこ、聞いてくれます??」


 とたんに顔がにやけてくる。


「ひとえにイケボって言っても人それぞれと思うのよね〜。声とキャラクターがマッチしてこそのイケボって思うわけ。だから具体的にこの声優さんって言いにくいの。だってそれぞれにいい声なんだもん。低くてワイルドな声も好きだし、少し高めの優しげな声も好き!でもそれはどちらかというとその声を当てているキャラがイケメンっていうのもあるのよね〜。だからこの声ってチョイスするのはホント難しいんだけど、でもしいていえば『櫻井孝宏』さんとか『諏訪部順一』さんとか!!あの声で優しく声をかけられたり愛をささやかれたら……もうっ絶対濡れる!濡れる自信がある!!」

「はぁ」


 友人があっけにとられている。


「ってもあなた、声優さんには興味ないから知らないでしょ?ちょっと待って。今ユーチューブで出すから!」

「え?いいよ。そこまで」


 と彼女が、取り出した私のスマホの画面に手を置く。それを払いのけるようにして私が検索を続ける。


「いいから聴いて!!ほんと素敵な声なんだから!!!」


 と、引き当てた当該声優の声を流すスマホを彼女の耳に押し当てる。

 いらないといいつつ聴いてくれちゃったりする。毒舌なわりに彼女は律儀だったりするのだ。


「で、こっちが諏訪部さん」

 

 と、もう一つの声を流すスマホを再び彼女の耳に押し付ける。


「確かにかっこいい声かもしれないけど、この二つなんか系統が違くない??」

「そうなんだけど〜。でも好きなの!!知性と色気を兼ね備えた方が櫻井さんだとするとワイルドと色気のある声が諏訪部さん」

「ふぅん。あんたにはそう聞こえるのね」

「そうなの〜」


 たかだか声を聴いただけなのに、思わず「はわ〜ん」となってしまう。ほんと、ちょろいな私。


「やー、もうね。私が困っているときにすっとでてきて、この声で『かして。僕が変わるよ』とかいってさくっとトラブルを解決してくれてって。お礼をいう私に「別に。仕事だから」とかいって颯爽と去っていく。普段寡黙だからめったに話さないのに声がイケボで、このクールさ!!そんなんことがあったら、ほんと私は絶対卒倒するわ〜!!」

「いつのかにか妄想シチュエーションに突入したね」

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