リニューアル⑧

リニューアルオープンイベントが今日と明日の2日間。


売上ない俺は、新人たちと一緒に店の掃除をしてた。


前の店の3倍くらいの広さになった。


掃除がめちゃくちゃ大変だった。


人数そのままなのに、店の広さが3倍でとても大変。


早く掃除を免除になる売上を上げないと。


そう強く感じた。


掃除も終わり、掃除をしていないホスト達がちらほら出勤してきた。


リニューアルオープンに向けて先輩たちは気合いが入っていた。


リニューアルオープンイベントが始まった。


続々と来店してくる客。


今日もヘルプばっかで自分の客はいなかった。


皆、新しい店なので、慣れず動きづらそうだった。


おぼつかないというかぎこちないというか。


元からある店ではなく、0から新しく作った店。


慣れてる人などいない。


自分らでやってく中で、やりやすいやり方を模索しなければならない。


しかし、そんなことは客からしたらどうでも良いことだ。


目の前のホストや、自分の扱いに不満さえなければ文句はない。


前の店は正方形に近かったが、リニューアルした店は長方形だったため、酒を取りに行くのも距離が長かった。


席からキッチンまですごく長く感じた。


イベント自体はカナデがシャンパンタワーもしてとても盛り上がった。


客の数も多かった。


席が多いので、むしろホストが足らないくらいだった。


ただ、なにか違和感というか変な感じがしていた。


他の従業員も感じていたと思う。


俺の地元、東北には「いずい(いづい)」という方言がある。


これを他地域の人間に正確に説明するのは非常に難しい。


もどかしいというか、変な感じがするというか、そんな感じだ。


例えるならTシャツを裏表逆に着ていて、着れないこともないけど違和感がある。


そんな時に「この服いずいな~」のように使ったりする。


リニューアルした店は「いずい」という言葉がすごく適していた。


なにと言われたらはっきりとはわからないが、なんとなく居心地が悪かった。


新しい店だから当然だった。


ものすごくやりづらかった。


イベントは特にトラブルもなく終わった。


イベントが終わり、緊急ミーティングが行われた。


「いずい」感覚は俺だけでなく、周りもそうだった。


ミーティングが始まった。


「リニューアルオープンして浮き足立ってる。」


「上の空になってる。」


店長から喝が入った。


しかし、それはまるで効果がなかった。


店長はそれすらもわかっていた。


しかし、なにもせず放っておくことはできなかった。


この時、俺はこの店を離れたいと思ってしまった。

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