リニューアル⑦
リニューアルオープンに伴い新人が増えてきた。
俺はずっとリニューアルオープン前にしようと決めていたことがある。
引っ越しだ。
寮から出たかった。
寮はだいたい3、4人で住むことになる。
新人だけで同じ部屋にならないように、適当に振り分けられる。
まったく喜ばしいことではないが、俺は寮メンバーの中では上の人間だった。
つまり新人が入ってきたら、必然的に俺が世話係のような感じになる。
とてもめんどうくさかった。
売れてないのに新人の世話などしたくもなかった。
寮に入る新人も増えることが予想できる。
それなら出よう。
そう考えていた。
店から近くてそこまで高くないマンションを探していた。
そんなマンション、ミナミ周辺には腐るほどあった。
不動産に飛び込みでいって一時間で決めた。
一応、内覧はしたが、それすらもいらないくらいこだわりはなかった。
店から自転車で10分かからない場所だった。
小奇麗なマンションの四階。
上にいけばいくほど広く高くなるんだろうが、下の階の部屋は狭く安かった。
学生の時にしてたので、今さら一人暮らしに対しての憧れはなかった。
ただ、寮に一年以上も住んでいた。
ようやく一人暮らしが出来るといった喜びはあった。
俺は荷物がなかった。
家電は寮に備え付けの物があった。
引っ越しはレンタカーを借りて後輩に手伝ってもらい、一時間程で終わった。
「ゲンキさんほんとなんも物ないっすね~。」
昔からこの言葉はよく言われる。
それくらい物に執着がなかった。
「そやねん。業者に頼むのもったいないくらいなんもないやろ?ありがとう。飯おごるわ飯いこ。」
引っ越しを手伝ってくれたお礼に、後輩に飯を奢った。
明日は店に集まってミーティングと店内の整理だった。
リニューアルオープンまで時間がなかった。
夜はリニューアルオープンに向けた決起集会がある。
このスカウト期間中に5人の新人が入った。
俺がスカウトした新人も1人いた。
果たして、何人が残るんだろうか。
一日片付けが終わり、決起集会という名の飲み会が始まった。
すごくめんどくさかった。
仲良くなるとかいう目的。
しかし、こんなのがあってもなくても、仲良くなるやつとは仲良くなる。
仲良くならないやつとは仲良くならない。
店の飲み会は強制参加だったので参加はしていた。
会社の飲み会ってこういうことなのだろうか。
俺は枝豆をつまみ、ビールを飲んでいた。
明日はリニューアルオープン。
リニューアルオープンイベントが2日間に渡って行われる予定だった。
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