ミユ⑨

ミユはそれからも週3くらいで店に通ってくれた。


毎回の会計は2~3万円程。


たまにシャンパンをおろしてくれ、5万円を越えるくらいになる時もあった。


売れてるホストからしたらたいした客ではないが、売上がずっと0円だった俺はすごくありがたかった。


だが、トクちゃんはもっとすごかった。


毎回10万円は越えていた。


たまに30万円程にもなっていた。


金額もそうだが、何より驚くのは毎日来ているということだ。


もちろん、毎日来てそんな会計だったら店からはめちゃくちゃ優遇される。


ヘルプの数や質も変わる。


ミユが1人の時と、トクちゃんと2人で来た時の店の対応はまったく違う。


もちろんそういう「差別」をしなければ店としては回らない。


当然の待遇といえば当然だった。


「優遇されたかったら金を使え」


夜の世界というのは非常にわかりやすい世界だった。


ミユと2人で来たときは、店が終わってから外で合流し、ご飯に行く。


その後で2部の系列店に4人で行くというのが恒例になってきた。


最初は2部のホストもあまりヘルプにつかなかったが、トクちゃんの噂が回ってきたのか、徐々に優遇されるようになってきた。


知らない系列店のホストとも徐々に話すようになってきた。


この時、初めて系列店の店長ヒカリと喋った。


ヒカリは現役バリバリ、というよりもう退いてる感じだった。


ホストをするというよりは運営側にだいぶ力を入れていた。


かといって、客がいないかというとそうでもなく、昔からの客がけっこうくるらしい。


ヒカリのバースデーの月に1人で1日1,000万円使う客もいるらしい。


まさにホストの世界といった感じの話に俺は興奮した。


ヒカリは話がおもしろかった。


話の引き出しがすごく多かった。


「コミュニケーションの上手さ」や「どのくらいモテるか」などは直接接してみないとわからない。


俺は話していくうちにヒカリさんに惹かれていった。


ヒカリさんの店も面白いな。


この時はその程度に思っていた。


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