ミユ⑧

ミユはなにも悪くない。


そもそも誰も悪くはない。


謝る意味わからない。


トクちゃんがすごすぎた。


トクちゃんの財布には100万円くらい入ってた。


トクちゃんはその日の会計を全額現金で支払った。


その日の営業終わりは従業員全員がトクちゃんの話でいっぱいだった。


「え、全額現金?トクちゃんって何者?」


「店長もすごいけどカナデさんの煽り方もぶっ飛んでるよな」


皆そんな話でいっぱいだった。


俺は営業終わりにすぐに店長の元へ行った。


「なんでトクちゃんがお金使うってわかったんですか?」


「んー、色んな情報トータルしてかな?家が金持ちっぽいな~ってのと他のホストでけっこう使ってたぽいからかな。」


店長は10年近くホストをしている。


経験からくる野生のカンのようなものか。


経験ではこの人には敵わない。


「やけど、多分俺から言っても駄目やからカナデにお願いした。」


ホストのシャンパンやシャンパンタワーは、本人がお願いしてない場合もある。


ヘルプから煽っておりるパターンの方が多い。


トクちゃんがどうであれ俺には関係ない。


俺は俺が出来る事をする。


「なるほど。ミユとアフター行ってきます!お先失礼します!」


アフターがあるホストは後片付けが免除される。


後片付けをしているホスト達を後に、俺は店を出た。


ミユと店の近くにあるダイニングバーに行った。


ここは朝まで営業しているため、ホストがアフターでよく使う。


シャンパンおろしてもらってすぐに約束してた。


店長にもちゃんと許可を取っていた。


店の近くのコンビニで待っててもらい、合流した。


「お待たせー!」


一緒にダイニングバーに入った。


席は半個室15席とカウンター5席あり、そんなに混んでいない様子だった。


薄暗く、窓際の席からは道頓堀川が見える洒落た雰囲気だった。


ワインとシャンパンの種類も豊富で、見たことも聞いたこともないようなものばっかだった。。


ワインとシャンパン普段はまっまく飲まないので、そっちには目もくれず注文をした。


「ビールとサングリアお願いします。」


ミユはサングリアを頼んだ。


飲み物が来てとりあえず乾杯をした。


「今日はごめんね。」


またミユが謝ってきた。


「いや、なんで?むしろありがとうだよ。まあタイミングがあれだったけど~ハハハー。まあ飯でも頼も!」


売れてない俺にとってはけっこうな値段の店だった。


見栄を張るのもホストの仕事の1つだと思い、飯をいくつか頼んだ。


ミユは嬉しそうだった。


女が好きなこういう店。


俺にはまったく理解が出来なかった。


昔ながらの居酒屋が好きな俺は落ち着かなかった。


酒を飲むのも気を遣う感じが何とも窮屈だった。。


運ばれてきた飯を食べながら、ミユの過去の話をした。


実はバツ2で、子どもは父親違いらしい。


店内で話題もち切りのトクちゃんの金の出所。


トクちゃんもそうだがミユの金の出所も謎だった。


口には出さず、その場を楽しんだ。


「ご馳走さま!楽しかった!また行こう!」


喜んでくれてよかった。


ミユと解散して寮に帰った。



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