サキ④

「奢りシャンパン」


読んで字のごとく、ホストがシャンパンを奢ることだ。


普通は客がシャンパンを原価の10~15倍程の価格でおろし、シャンパンコールをホストがする。


奢りシャンパンは、ホストが原価を店に払い、客にシャンパンコール付きでプレゼントする。


通常は何回も通ってる客に、別のプレゼント付きでしたりする。


シャンパンの原価は1000円ほどだった。


サキにあげるのこれしかない。


席を一旦離れ、マキオに聞いてみた。


「あそこの席の女の子に奢りシャンパンっていけますか?」


マキオはサキの方を見た。


「まだ2回目よな?それは厳しいな~」


当然だ。


そんな甘くない。


まだ2回目の客、ましてやお金を大して使ってないサキに優遇する意味などない。


原価でシャンパンをおろすなど、店的には売上が上がる女の子じゃなければメリットはない。


ホストクラブはお金を使う場所だ。


しかも、頼み込んでるのがまだ売上もない、歴も浅い俺。


店への貢献度からも、店側が断るのが普通だ。


「そこをなんとかお願いします!」


冷静に考えれば、他にもプレゼントなどいくらでもある。


他の祝い方はいくらでもある。


なぜか俺はムキになっていた。


そう、俺はサキを好きになっていた。


「わかったよ。これからもっと頑張れよ」


寛大な父のような一言でマキオさんは許可をしてくれた。


「ありがとうございます!頑張ります!」


奢りシャンパンのシャンパンコールが始まる前に一応カナデにも報告した。


「オッケー」


とだけ言い、去って行った。


カナデはなにかを言いたげな顔をしていた気がした。


「○○ステージ、○○ステージ」


奢りシャンパンのシャンパンコールが始まる。


シャンパンコールは始まる前に、シャンパンコールをするホストがステージに集まる。


集合次第、店は暗転し、音楽が流れ、シャンパンコールが始まる。


爆音と共に様々な色のライトが店内を照らす。


数秒後にはシャンパンをおろした席のみを照らす。


「誕生日おめでとうー!」


「え、私?ありがとうー!うれしー!」


サキは喜んでいた。


よかった。


喜んでくれた。


素直に嬉しかった。


シャンパンコールは10分程で終わったが、一瞬に感じた。


その日もすぐ終わり、営業終わりに店の片付けをしていた。


「もう少しでサキに会える~」


ウキウキしていた。


すると珍しく


「ゲンキー!今日めしどう?」


カナデに誘われた。


「すいません今日は女の子の予定が」


「あ、さっきの女の子か。オッケー。また今度いこか」


「はい、お願いします!お疲れ様でした!」


サキのもとへと向かった。

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