サキ③

店内が忙しい時はしないが、暇な時は客をビルの下まで送り出す。


俺の店は2階だったのでエレベーターで降りて下まで行き、ビルの入り口まで見送る。


「またね~」


そんな普通の挨拶をして別れる。


客を見送って、店に戻る。


カナデは今まで何人にもしてきて、普段通りだった。


「ゲンキも初めてのニコイチやな。てか初めての指名?」


「そうです」


「おめでとうー!」


カナデにとっての今の指名は何人目かわからないが、俺にとっては初めて。


カナデにとっては大したことではない。


しかし、俺には大事な一歩だった。


カナデの普段通りの姿を見て、ふと我に返った。


まだ営業時間は終わってない。


ヘルプを頑張ろう。


そう思い店に戻った。


今日はありがとうー!気をつけて大阪楽しんでなぁー!


みたいな簡単なLINEを送った。


その日の営業は楽しすぎてすぐ終わった。


サキとのLINEは楽しかった。


たわいもない話しかしてない。


しかし、盛り上がるし、何を返そうかなとか考えず、すぐ送ることが出来た。


サキは人見知りで男の人と喋ることがほとんど出来ないらしい。


「よく俺と喋れたな」


「だって喋りやすかったもん」


俺って人見知り相手得意なのかな。


軽く考えた。


営業中も、キャッチしてる時も、寮にいる時もサキのことを考えてた。


LINEだけの関係が1ヶ月程経った。


「今度遊ばない?」


俺から誘った。


「えっ、いいの??」


サキも初めてのホストだったため、俺と遊びたいが、それを言っていいのかわからなかったらしい。


元から大阪に来る予定が近々あるらしく、その時に遊ぶことになった。


楽しみだった。


ただ、この時の俺は浮かれていて、ホストと言う仕事をちゃんと理解していなかった。


俺にとってサキは、ホストとしての俺をダメにする第一歩だった。


サキが来る日は俺が営業日だったため、営業終わりに会う約束をしていた。


今日の営業終わりにサキに会える。


それだけで乗り切れる気がした。


相変わらず俺の客はいなかった。


浮かれ気分でヘルプしていると、見たことある2人組が来店した。


「いらっしゃいませー!」


サキとミナコだった。


あれだけ欲しかった客と売上。


客が来たのに複雑な感情だった。


サキが客になることが素直に喜べなかった。


どういう感情かわからなかった。


「急やな!」


「来ちゃったー!」


今日はテンション高めだった。


サキの誕生日が近かったため、大阪に住んでる友達と誕生日パーティーをしていたらしい。


なるほど。


プレゼントなにもない。


その時、この前セラに研修で言われた「奢りシャンパン」を思い出した。









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