出勤1日目

「おはようございます!」


ホストは何時に出勤しても、基本的におはようございますと挨拶する。


今日から出勤かと思うとワクワクする。


「よろしく」


内勤(ボーイ)のマキオだ。


肩に着くか着かないかくらい長さで、茶髪のやんちゃな兄ちゃんみたいな感じの人だった。


顔色があんま良くない人だった。


怖くて聞けないがクスリとかやってるのかなぁ。


SV(スーパーバイザーの略)というよくわからん役職の人だった。


ホストは基本的に偉いのか偉くないのかよくわからない役職が多い。


本人ですらよくわかっていない時すらある。


軽く雑談して時間になったらマキオが


「そろそろやるか」


と言って立ち上がった。


ホストが一番最初にする仕事はなにか。


酒の作り方?

接客の仕方?

テーブルマナー?


全て違う。

正解は、店の掃除だ。


ほとんどの店は売れてないホストと、内勤が営業前に店の掃除をする。


そのため、売れてないホストは営業の一時間前には店に来て、掃除をしなければならない。


逆を言えば、ある程度の売上があれば掃除をしなくていい。


コンクリートの床にモップを使って掃除する。


これがけっこう疲れる。


なにせ店全部やらなければならない。


「掃除出来ないホストは売れへんぞ~」


マキオが言った。


その気持ちもわかるがやっぱり大変。


掃除が終わったら一服タイムになる。


俺は吸わないが皆吸う。


俺にはいらない時間だった。


時間が経つにつれ、ちらほら売れてるホストも出勤してくる。


カナデもオープンしてちょっと経ってから出勤してきた。


「カナデさん、おはようございます!」


「おっ、ゲンキー!入店おめでとう~これから頑張ってこ~」


相変わらず同い年とは思えないオーラ。


掃除が終わり待機。


するとマイクで「ゲンキブース(DJブースまで来いという意味である)」と呼ばれる。


ブースに行くとセラがいた。


「ゲンキ、研修しよか」


VIPルームで待機しとけとの指示に従い待機。


「じゃ、研修しよか!その前にうちの店の事から説明するわ!うちの店は系列店が大阪にも何店舗かあるんよ。1部、2部、3部ってな感じ」


「1部とか2部ってなんですか?」


「時間帯のこと!1部、2部、3部ってのがあって1部は大体19~25時、2部は朝3~9時、3部は11~17時って感じやな!」


「昼に来る人いるんですか?」


「あんまおらんなぁ!ギャハハ!」


相変わらずの笑い声である。


「じゃ研修するよ!」


研修が始まった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る