ホスト研修

「研修はステップ1からステップ7の7つあって、それが完了したら研修は終わり!どのくらいの期間で終わるかは人による。1ヶ月で終わる人もいれば3ヶ月かかる人もいる。おれは未だに出来へんけどな。ギャハハ!」


「セラさんってホスト初めてどのくらいなんですか?」


「いまで3年くらいかな~?」


「カナデさんは?」


「あの人は5年くらいだったはずやな~」


「5年くらいやればああなれますかね?」


「まあゲンキならなれるんちゃう?知らんけど。ギャハハ」


セラは基本的にこんな感じでいつも適当。


楽でいいが。


研修はわかりやすく言うと、最低限のテーブルマナーや伝票の書き方、置いてあるメニューの料金などを教わる。


これが出来たとしても、最低限のレベルなので大したものではない。


挨拶とか、もはや人として当たり前レベルの教育もある。


俺は呆れたが、それすら出来ないホストも多いのも事実だ。


ただ馴染みのない単語も多くけっこう苦労した。


シャンパンなんか飲んだことない。


ブランデーなんか見たこともない。


ドン・ペリニヨンってなんだ


ヴーヴ・クリコってなんだ


そんなレベル。


ちなみにどちらもシャンパンの名前である。


一番最初はテーブルマナーだった。


おしぼりの畳み方を教えられた。


お客さんに渡したおしぼりは、三角に折り畳んで、折り目の方をお客さんに向けるらしい。


「なんでですか?」


「俺も知らねぇけど教えられたからやってる!ギャハハ」


実にセラらしい。


知らない世界のことは、その世界に慣れるまであまり深く考えず、言われたことをやっとけば良い。


なんとなく知っていた。


大学の時の経験が活きてる気がした。


とりあえず言われたことをメモしまくって覚えた。


とりあえず覚えよう。


一通りステップ1の研修が終わり、ステップ2に進む。


これは礼儀的な部分であった。


うちのグループは礼儀に厳しく体育会系であった。


根性論、精神論で押しきる部分が強い。


個人的にあまり好きではなかった。


ご飯を先輩にご馳走になったら「ご馳走様」のLINEを送れ


ちゃんと挨拶しろ


そんなレベルのことであった。


当たり前だろ、と思ってはいたが、やはりそういう所が一番大事らしい。


ステップ2もサクサク進んだので、セラと雑談してた。


「いつもセラさんが新人に研修することが多いですか?」


「まあそやな~俺客いないし、話しやすいから任されやすいな~」


セラはお客さんがいなかったが、上司からも部下からも客からも信頼されていた。


マスコットキャラクターのような存在だった。


「まあそろそろどこかヘルプしようか」


セラはそう言ってタバコの火を消した。










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