体験入店

セラと一緒に席に向かった。


正直に言うと、緊張し過ぎてなにも覚えてない。


先輩ホストに聞くと、皆そんなもんらしい。


酒をもらって飲んだ気がする。


女の子はあんま可愛くなかった気がする。


セラの笑い声うるさかった気がする。


緊張しすぎて、一瞬で終わった。


3組くらい連れ回された後、またVIPルームに連れてかれた。


「どうだった??」


そう言いながら、セラはタバコに火をつけた。


「緊張し過ぎて。。。」


「最初はそんなもんや!ギャハハ」


タバコくせぇ。


俺はタバコを吸わない。


吸い方すらわからない。


煙を肺に入れる、ふかす、どっちもよくわからない。


そんなレベル。


ホストの99%はタバコ吸う。


「よかったら一緒に働こうよ!」


皆に言ってるんやろうな、と思いつつ、やってみたさはあった。


そもそも俺は自分の知らない世界に興味がある。


基本的に好奇心がある。


飽きっぽいけど。


やったことないことはとりあえずやってみたい。


あと、仕事中に酒が飲めるってのは斬新だった。


「とりあえずあとでカナデさんに連絡します!」


と言い、給料として貰った5000円を手にして店を出た。


「今日あんまり喋れなくてごめんよぉ!どうだった?」


というLINEがカナデから来てた。


カナデは、売れっ子ホストのためお客さんが多く、俺に構ってられない様子だった。


「楽しかったです!入店します!」


即返信した。


行動の早さ、決断の早さだけは自慢できる。


「おお、明日とか来れる?」


早速体験入店の次の日に入店した。


まだ大学生だったのでシフトで入店した。


(シフト=バイト、レギュラー=社員)


4年生の8月だったので辞めるつもりはなかった。


大学自体が国家資格を取得出来るとこだったので、国家資格はとりあえず取っておきたかった。


「国家資格の試験が終わったらレギュラーで入店する」


そういう約束でシフト入店した。


だが、実は就職先は決まっていた。


国家試験は来年の2月。


半年間くらいはシフトで働いて辞めようと思っていた。


そのくらいにはもう飽きてるだろう。


その程度だった。


そんなこんなで出勤1日目が始まった。


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