売れないホスト物語

げんき

ホストとの出会い

「仕事しながら酒が飲める!」


その一点くらいなもんだった。


ホストを始めた理由をよく聞かれる。


「金がほしくて?女を作りたくて?」


違う。


仕事中に酒飲めるなんて最高。


これに尽きる。


俺は東北の田舎で生まれた。


コンビニまで車で30分かかるような所である。


そんな俺がホストをするなんて思ってもなかった。


「ゲンキ!次B2の席、シャンコ(シャンパンコールの略)お願いできるか!?」


ゲンキは俺の源氏名だ。


源氏名に深い意味はない。


ホストをしている場所は大阪ミナミ。


大学で大阪に出できた。


大阪の大学に進むために大阪に来たが、その大学に行きたいからではなく大阪に来たいだけでその大学にした。


大学の授業は退屈だった。


しかし、単位を落としたことはない。


大学4年生になり、夏休みで暇な時、なんとなく始めた出会い系アプリからこんなメッセージがきた。


「ホスト興味ありませんか?!今なら4,5時間程の体験入店するだけで給料もでますよ」


写真見てみたらめちゃかっこいいホストからだった。


給料もらえるなら試しに行ってみようかな。


「興味あります」


すぐ返信した。


まあ話のネタにでもなるか、くらいなもんだった。


当日、とりあえず服装も何を着てけばいいのかまったくわからなかった。


なので、黒のジャケット羽織って無難な服を着た。


19時に店の近くの橋で待ち合わせだった。


待っている間、めちゃ緊張した。


そのホストは「カナデ」という名前だった。


約束の時間より少し遅れてカナデは来た。


めちゃかっこいい。


オーラがあり、少なくても同級生にはいない。


軽く自己紹介をされ、そのまま店の中に連れてかれた。


なんかキラキラして薄暗いとこやなって印象だった。


「まず軽く面接があるので~」


カナデはそう言ってどこかに行った。


VIPルーム

(ホストもキャバクラも大体フロアとVIPがある。セット料金が高い方)

に連れてかれて座って待っていた。


すると、ウーロン茶を持って小太りで人の良さそうな人が来た。


手には何枚か書類を持っていた。


「セラって言います今日はよろしく!」


名刺を渡された。


かっこよくはないけど、同性から好かれそうな、良い兄ちゃんみたいな人だった。


「最初に履歴書とこの書類書いてもらえる?あと免許証のコピーもらってもいい?」


「あ、はい」


履歴書は至って普通の物だった。


書き終わってからセラと世間話をした。


カナデ、セラ、俺、全員同い年だった。当時21歳。


カナデが自分と同い年というのは衝撃だった。


「あのオーラで21歳!?すげぇ」


「そやろ!老け顔やろ!ギャハハハハ!」


セラはとにかくよく笑う。


その笑い声だけで面白くないことでも面白いと勘違いしてしまう。


セラのお陰で緊張がだいぶほぐれた。


やっぱりそういうのうまいなぁと心の中で思った。


「じゃ実際一緒に席についてみようか!」


セラはそういうと立ち上がった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る