第17話 マインドコントロール
鈴子はその新興宗教にマインドコントロールされている。私は直感した。
[そのスペシャルミーティングに出席したら、今度はその教団の教えを伝えていくの]
やはりそうだ。ねずみ講のように信者を増やさなければ意味がない。信者と書いて、儲けと読む。私は興奮して話す鈴子に集中した。
[私ね、とってもいい人に会ったのよ。隣の家の失火で自宅全焼した老婦人。彼女は戦争を生き抜いた強い人。すぐにホワイトエレファントの購入を希望したわ]
鈴子は純粋なのだろう。その老婦人に幸せになって欲しくて説明したのだろう。
[ホワイトエレファントを幾つ売るかで、その教団のレベルが上がるのよ]
すぐに私の期待を裏切る言葉を続けた。私は軽蔑と興味の入り交じった目で鈴子を見る。
[10体契約すると菫、20体でデイジー、30体で
白百合と呼ばれるの。100体契約で黒薔薇って呼ばれる幹部になれるの] 鈴子の目は輝いている。私は唖然としている。
[老婦人は、私から教えを真剣に学んで、ホワイトエレファントに祈祷するようにもなったわ。
素晴らしい事ね。幸福をもたらす象に信仰を働かせたのよ。そしたらすぐに息子さんが家を建てたらしくて、同居話がすすんだらしいの]
鈴子が突然悔しそうにハンカチを噛む。
[私、そのあとも老婦人の元に通ったの。そしたら息子さんにホワイトエレファントを返品されて、2度と来るなって拒否されたわ]
[お金はどうなったのですか?]そこが一番気掛かりで質問する私。
[契約した後だから、返品しても教団には満額払う取り決めがあるの。私の貯金から払ったわ]
教団は一切被害を受けることはないシステムになっていた。返品されても信者が払う。返品された象牙はまた他の人に売ることも可能だ。
よく出来ている。信者はそのホワイトエレファントを神のように扱い、黒薔薇と呼ばれる地位を目指してまた不幸な人間を探す。
マインドコントロールの恐ろしさは、二つの欲求を同時に持たせ、それを満たすために命をさえ掛けさせることだろう。
[ 私ね、みんなに幸せになって欲しかったの。
人間には出来ない事が、あのホワイトエレファントには出来るのよ。黒薔薇になると、パールエレファントを与えられるの。その無限の力といったらすごいものらしいの]
きっとパールの次はシルバー、ゴールドとあるのだろう。オリンピック選手が過酷な練習に耐え、金メダルを手にいれるという心理と同じだろうと思う。
鈴子はまた話を続けた。
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