第14話 新興宗教
痛み止めが効いたのだろうか。起きたら頭痛
がなくなっていた。ソファで寝てしまったらしい。毛布が掛けられている。
[ みどりさん、大丈夫ですか?あと一時間で予約のお客様がみえます。無理しなくていい]
[ 頭痛もすっかり治りました。大丈夫です]
私は毛布を丁寧にたたみ、お返しした。
その客は3時ちょうどに来店した。40代の髪の長い女性だ。少し神経質そうな色白の女性だ。腕時計を確認しながら入る。
[あの節ははどうもお世話になりました]
どの節か分からないが、私も挨拶する。
[どうぞ、こちらにお掛けください]
私はソファに案内し、紅茶をいれた。
[ありがとう。あの日もミルクティーだったわね] 女性が懐かしそうに言う。
あの日とはいつなのか?きっと近くの人でどこかの喫茶店で会っているのかもしれない。
思い出すのが面倒だし、聞くのも悪い気がして本題に入った。
[私は古山鈴子と申します。41才です。リメイクして欲しいものは象なの]
そういうと、鈴子は象牙出来た象の置物を赤い布を敷き大事そうに置いた。今にも動きだしそうな目をした象だ。ティッシュ箱位の大きさだが、素人の私でも、高価な物だと察した。
[これを印鑑にしてください。彫って欲しい名前はもう電話でオーナーに伝えました。私ね、これを病院で知り合った子にあげたいの。ガンで入院してたんだけど、手術後のリハビリで屋上に行ったときに出合ったのよ。病人はどことなく暗いでしょ、でもその子はいつも笑っていた。レースのついたパジャマを着ていたわ。真っ白なの]
鈴子はそういうとハンカチで口を押さえ、ウッと声を出した。手術の傷痕が痛むのだろうか。
今日は雨が降っている。そのせいか。
[大丈夫ですか。痛みますか?]
[ ありがとう。大丈夫です。私はその子をレースちゃんって呼んでいたわ]
ピンクやおさげやレースちゃん。みんななぜ
名前で呼ばないのか不思議だった。
話が始まる。慌て注文書とペンをとった。
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