第12話 境界パーソ

 どんなMの形にするのか、私が苛立った顔をしている。ミナに促そうとまたパソコンを見ていた。

 

 [ おさげちゃんに何を聞いてもらったか気になるでしょ。今から話す]

 私の催促を無視してミナは話始めた。


 [ ユキはいわゆる心配性ね。いつも何かにつけて心配してた。〘またあのお客さんが私を指名してくれなかった。あの社長さん、昨日来なかった。私、悪い言葉を言ったかな。〗など電話でくどくど言って私を困らせた。違うとか大丈夫って安心させても、また電話だ。電話にでなければ、留守電に電話してって入ってる。赤い点滅ランブが怖かった。いわゆるノイローゼになったよ。怖くて電話線を抜いた。フィリピンではそんな子じゃなかった。日本来て変わったよ。そしたらおさげちゃんが言った]


 私は関心がないのか無表情だ。

 

 [ミナさんとユキさんは共依存の関係です。お互いがお互いを必要としていたけど、ユキさんに男の人が出来たから潜在的にミナさんはユキさんを避けた。それを感じ取ったユキさんは不安になる。一切、関係を断ち切らないと、もっと大変な事になりますよ]

 

 ミナは頷きながら自分の決定を正当化して、おさげちゃんにこう答えたと話す。


 [ 関係を断ち切った。ユキと口きかないように頑張った。寝不足は嫌だ。でも私の悪口をみんなに言う。あんなに仲が良かったのに。頭来て、ユキに貰ったもの全部捨てた]

 

 ミナが苦々しそうに吐き捨てた

 

 [それを聞いて、おさげちゃんは態度が180度変わったユキの事を、境界パーソだ。好きな相手に、バック、洋服、宝石な ど自分の身に付けたものをプレゼントする が、自分を受け入れてくれないと分かると攻撃に変わる。いわゆる心の病らしいと]


 私は頷いて聞いている。 

  

 [おさげちゃんはたくさんアドバイスをしてくれた。毎日、夕方4時頃バス停にいたからそこで話した。2カ月位した頃、突然ユキが現れた。私とおさげちゃんが話している事を知っていたらしい。ユキは私に裏切り者と叫んだよ。悲しかった。おさげちゃんは行くなって止めたけど、泣いて走っていくユキを追 いかけたよ。それがおさげちゃんに会った最 後の日だ]


 私は涙こぼしているミナの顔を見つめてい た。どんな言葉をかけていいのか分からない 顔をしている。

 

 [おさげちゃんの顔を見るとあざがあった。どこのどいつにやられたか言わなかったけど、毎日病院行ってた。そんな大変なのに私の話を聞いてくれた。優しい子だ]

 

 ミナはそのおさげちゃんに感謝したいのだろう。私にとびきりのネックレスを作ってと手を握っている。

  

 今ここに注文書があるということは形が決まったのだろう。

  

 山吹色の封筒にはプリントアウトしたネックレスの写真が入っている。

 

 中学生の子には少し落ち着いたデザインだが私の好みだった。

 

 注文書を同じ封筒にしまうと、また突然の眠気に襲われた。


 



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