第16話 雨に打たれて熟考する
城戸さんは、困惑させてしまい
わるいタイミングで涙を拭えずにいた俺の
姿を高野達に目撃されてしまう。
その時の、高野の表情はらしくなかった。
俺は走っていた。居た
唯悧とばったり会わないように普段は
通らない道を走り外に出る。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・・・はぁ」
けっこう走ったのだろうか、息が上がって
いて、晴れていた空は薄暗く雨が降り始めている。傘は持ってきてないが今は
雨に打たれたい心境にある。
そして、目的もなく落ち着くまで歩く。
(唯悧があそこまで追い込まれたのは
一体なんなのか・・・イヤ、違うだろ!
悲しませた理由を考察して謝れるのが
優先じゃないか。)
水溜まりに踏みボトムスの裾が濡れてしまう
のを感じながら考える。
ながらスマホをするいい大人の大学生が
乗る自転車に危うく衝突しそうになる。
相手は謝らずに去るが、そんな下らない
事で思考を使いたくない思考をする。
ゆっくり運転しない車が通り過ぎ
水溜まりがハデに舞い上がり俺の体から
顔まで命中したが、後で洗えばいい
思考をする解決するために。
「・・・スマホで、十時と城戸さんの
カップルの写真を見せれば・・・いや、
まずは真摯に謝ってから・・・」
事情を説明しないといけない。そこから
始めないと証拠とか友人の発言の効力は
出るのはそこからだ。
(そうと決まれば、家に帰るとしよう。
唯悧が戻って来ているかもしれないし。)
自分の家に向かうときもうまい方法を
巡らそうとしながら、とくに良策が
見つからず辿り着く。ドアを開けばいる。
(まさか、唯悧がいると思っただけで
緊張する時がまた訪れるとは思わなかったが・・・・・よし!)
今回は迷いを断つのは一瞬。
玄関の靴には唯悧のピンクのスニーカーと
濡れた廊下、間違いなく帰っている。
「・・・ただいまー!」
いつもより明るく意識して声高に言うが
返事はない、分かりきっていたが。
浴室に行きたいが妹が先に入っていて
鍵を掛けるの忘れているのを懸念して
まずは、居間に向かいタンスからタオルで
濡れた体を拭く。
さて、次は確認だ。唯悧の部屋の前――
トントンと軽く叩く。
「唯悧、居るなら返事してくれー」
返事を待つが返ってこない。
「・・・開けるぞ」
ドアノブを引く、しかし施錠されていて
開かない・・・中にいるようだ。
「・・・俺は風呂に入るから
その何て言えばいいのかあの人は
彼女じゃないから・・・それじゃあ」
ドア越しに伝える形になったが、なんとか
言えた。寝ていたらもう一度、言わなければ
ならないが俺的には大きな一歩だ。
そうしよう。ネガティブに考えずに。
そうしないと、 また失敗しそうで
立ち直れない気がするから。
風呂から上がるとですぐ夕食を作り始める。
「今日はレタス多めのロコモコだ!」
夕食完成して食器を並べたテーブルを
唯悧が向かい席に座り俺は明るく説明。
「・・・・・」
だが、唯悧は無言だった。
「今日は唯悧の好きなハンバーグだぞ。
上に乗せた目玉焼きが美味しそうにできた
これは、少しした自信作だな、うん!
それで味噌汁はサバ缶を使った
ニンジン、ダイコン、豆腐なんだ。」
「・・・・・・」
「・・・せ、説明はこれぐらいにして
いただきます」
「いただきます・・・・・」
帰ってから唯悧の言葉がやっと聞けた。
それだけで、嬉しくなる。距離が少し
戻ったような・・・そんな気がした。
お互い黙々と食事となり次の日の日曜。
「ふあぁー、」
午前7時。早めに朝食を作って一緒に
プリキュアを観る!
居間に入りテーブルにスマホを置くと
ラインのトークの返信が鳴る。
誰だろうと思い見ると・・・唯悧が
今日はプリキュアだけど、リアタイは
やめとく・・・・・だと!?
ちなみにリアタイは、リアルタイムの略。
そんな誰に説明しているんだ俺・・・
頭がおかしくなったのか。あまりにも
衝撃的だった、眠っていて観れなかったのは
時々、あったが唯悧が断れたのは初めてだ。
「・・・やっぱり、まだ勘違いを・・・
よし!なら、返信で。」
ラインで返信内容に誤解を解かせる。
細かく具体的に短く書いて送信。
返信はすぐにきた。
「・・・えーと・・・そんなアニメの
ような展開があるか!・・・か。
でも現実に起きたんだけどなぁ。」
本当の事しか言っていないのに信じて
くれなかった。
結局、一人プリキュアやヒーロータイムを
朝食を食べながら観るのだった。
11時になると唯悧がようやく居間に
降りてきた。
「おはよう唯悧めずらくしく遅かったな。」
「・・・・・おはよう。」
録画したアニメを観る唯悧、その表情は
まだ暗い。こんなに暗いのは
今までなかった。
唯悧の朝食を持ていこうとして手が
滑り食器が落ちて壊れる激しい音と共に。
唯悧が驚いて振り返るのが見える。
「わるい、手が滑って・・・っ!?」
視界がわるくなってバランスが取れなくなり
つたない足取りで壁に背中から衝突。
そして、引きずるように屈み座って
息が苦しくなる。
「はぁ、・・・はぁ・・・めまいがする?」
「お兄ちゃんーー!!?」
妹の唯悧が駆けつけてきた。こんなときなのに心配されたのが嬉しかった。
「わるい・・・多分だけど、熱が出た。」
唯悧の手が俺の額に触れ片方の手で自分の
額に触れ比較する。
「ほ、本当だ。肩につかまって!
お兄ちゃんの部屋まで移動する。」
「・・・ああ。」
唯悧の言葉に従い肩につかまる。
この距離感が懐かしかった。まるで子供の
ときのように信頼しきった関係に
戻ったみたいで・・・。
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