第15話 見えない路

話は少し遡る。わたしがお兄ちゃんと

彼女さんとデートをしている少し前―――


「面白かったよねぇ、最後の戦闘!」


ショピングモールの色んな飲食店が立ち並ぶ

飲食スペースに 四人掛けのテーブルに

座りアニメ映画を見終わったばかりで

興奮さめやらぬ気持ちを言葉にするわたし。


右の隣に座る茶髪ショートボブの同級生の

龍造寺銀二りゅうぞうじぎんには、

名前がカッコイイですけど、ほぼ毎日の

告白に頭を抱えるほどの美少女。


「そうだよね。とくにわたしが認めた

主役は見事の一言に尽きるわねぇ!」


「そうですわね。とくにパアーとか、

ドカーンで素晴らしかったですわ」


銀二の感想を賛同するのは、

腰まで伸ばしたキレイな黒のポニーテール

が自慢の美少女の島津龍白しまづりゅうはく。落ち着いていて大人のような

雰囲気がある同級生。


「・・・いや、わかんねぇーから」


半眼で、ツッコミするのは、

前髪を上げた恐そうな人だけど、実は

優しい体育会系の加藤虎之助かとうとらのすけ


「ねぇこれ食べ終わったら、わたし

服屋に行きたいんだけどいいかな?」


わたしは、お兄ちゃんにドキドキさせる

ために新たなる格好が必要です。

ドキドキしていたような反応なので

本当の所、どんな風に考えていたか分かりませんが可愛いと思わせることが

出来たなら成功といえますねぇ。


「そうね。お互い試着してちょっとした

披露会をやらない?きっと面白いとになると

思うわよ!」


銀二は、突拍子のない提案だと思いましたが

なるほど面白いかもしれません。


「そうですわね。誰かに評されることで

見識を広め、力を培うことができる。

わたくしもキラキラでプワプワなぁ、

そんな謎の力を覚醒をいたしますわ」


「・・・なんか、ちがくない。

擬音語の最後の方がなんなのか分からない

し、謎の力とか中二病に覚醒したのか。

中二病だけに」


「ハァー、随分ずいぶんと面白味のない事をおっしゃるのね加藤」


「ああ、面白味のないのは自覚しているが

そうさせているのは、どこかのバカな

お嬢様だと思うのは俺だけかな?」


虎之助と龍白が不適に笑ってパチパチと

静かな怒りを応酬が始まっています。


「ま、まぁまぁ。ケンカはやめて、ねぇ。

せっかくのかわいい顔とかっこいい

顔が怒ってよくないよ、

笑って、わらおうよ、ねぇ!」


わたしは、いつも二人がケンカすると

止める役目が自然と任命されその

役目を果たそうとする。


「・・・そ、そうだな。由布がそこまで

言うなら怒るのはやめることにするか」


「ですが、虎之助のようにわたくしは

そう易々とほだされません。

時代錯誤なその言葉いつの時代の人なのですか?フフフ」


「よし、そのケンカを買うぜ。今から

ゲーセンでその気負った態度を壊す!」


虎之助が優雅に紅茶を飲む龍白に

指を向ける。挑発はやめてほしい!

これを止めるわたしの身にもなってほしい。

そんなゲッソリする気持ちで根気よく

仲介・・・たぶんケンカを止める人は

こういう意味だってお兄ちゃんが

言っていた。その仲介を必死にする。


銀二と協力してケンカを鎮火しました。

この二人はなにかに例えるなら

犬と猿ですね。あっ、ちなみに犬は

虎之助で猿が龍白です。そう生産性の

ないことを想像していました。

食事を済ませ洋服屋に目指します。

土曜だけあって、人が多い。


「今更だけど、人が多いよね」


「まぁ、多くってなんだか疲れるのは

同感なんだけど、他の人からしたら

わたし達もその一人なわけよね」


隣の銀二と歩きながら思いつき話をしていく。後ろは、なんとかケンカせずに

なにか話をする虎之助と龍白。


「話は変わるけど、唯悧って自分の兄の

ために服を選ぶんだよね」


腕を頭の後ろに組んで視線を左の店を

見ながらそんな的が当たっていることを。


「そそ、そんなことないよ。

い、いくらわたしがブラコンと

分かったからっていくらなんでもそんなこと

ないよ。うん!」


「そこまで、分かりやすい戸惑いをすると

なんて言えばいいのか・・・

それはともかく、いつかはどちらかが

恋人とか別々で生活するわけだし・・・

あっ、でも例外もあるわよね何事も!」


お兄ちゃんが恋人と・・・そんな

想像するわたしは苦しくなる。

うん、絶対にイヤだ!

でも、きっとそうなる・・・近いうちに

そんな曖昧な形が見える。

いえいえ、考えすぎわたし。まずは呼吸。

・・・・・!よし、落ちついたから

いつもどおり明るく答えよう。


「心配しなくても、わたしやお兄ちゃんは

大丈夫だと思う。今は前よりも話せて

いるし、笑えて一緒にゲームとか食事

とか・・・えへへへ」


お、思い出しただけで嬉しくなってきます。

そして、隣の友達の引かれてしまった顔を

視界に入り自らの醜態を晒して

しまったことを自省したくなる。


「本当に好きなんだね兄のことが」


複雑そうに笑みで答える銀二。

疑問で訊きたい気持ちもあるけど、

今は好きと言われて恥ずかしくなる。


「ち、ちがうよ。好きなのはあくまで

お兄ちゃんとしてで、恋人とかそんなん

じゃないからねぇ!!」


自分でも分からないあせりが起きてしまって

必死になって否定。


「まぁ、そう言うことで納得するわよ」


「あー、それ納得していない納得しました

言葉だよそれは!」


銀二がやれやれな肩を揺らして少しイラっと

したわたしは反撃すると戸惑う銀二。


「えぇー!?まさかのお怒り?」


「そう、お怒りだよ・・・プッ、あはは」


「アハハハハ」


わたしが笑い出すと銀二も笑う。

「フフ、お二人は本当に仲がろよろしい

のですね」


「そうだな・・・そしてなぜお前は

姉のような上から目線で落ちいているんだ?

俺達と同い年だろ。・・・いやもしかして

年齢を偽って入学したのか?」


わたしと銀二が楽しく笑っている後ろに

ただならぬ気配がする。


「あらあら、面白いことを言うのですね。

貴方の方こそ年齢偽称ではなくて?」


振り返ると、龍白は、笑顔の表情で笑って

いない目をする。・・・こわい。


「そうかよ。なら戦って屈するしか

なさそうだな、あぁ!」


いかついぃーーー顔で睨む虎之助。こちらは

逆に恐くない。なんていうか考えが

分かりやすくて真っ直ぐだから?

そろそろ止めないといけない流れ。


「ほら二人ともどう、どう」

わたしは、馬をなだめようとするかけ声で、和ませようと試みる。


「由布、止めるなぁ。これは男と男の

勝負。」


「ええ、そうですわ!これは女の子同士の

引くことができない・・・戦い!」


二人が深刻そうな顔でわたしに

カッコよく言います。


「なんだか、カッコいい!」


「え!そ、そう?」


首を傾げる銀二。あれ?わたしだけなの。


「勝負は・・・ストツーだ!」


「フフ、わたしのサマーソルトキックで

華麗に決めさせて見せますわ。」


最早、勝利を決まったように答える龍白に

悔しそうに歯ぎしり(演技)する。

二人はゲーセンに向かおうと踵を返す。


「待ちなさいよ。ツッコミしないと

ボケが継続するようななにかが

あるのこれ!?ほら、茶番はこれぐらいに

して行くわよ。」


銀二が二人の話を中断させると、

ついてこい!と言わんばかりに先頭に

歩く。その姿はまるで引率する先生。

少し早歩きで銀二の隣に着くとスピードを落とし、再び二人で隣り合い歩く。


「危なかった。もう少しでわたしも

あのバトル空気にのまされる所だったよ。」


「いや、もう呑まれているし、

バトル空気ってなに?」


銀二がハァーとため息する。わたしは痛まれなくあはは!と笑うしかない。


「どうせ、兄のことを考えて舞い上がっ

てるんでしょ唯悧は。」


それは、ちがう。お兄ちゃんを考えて・・・

うん。その通りだと思う。思う節が多い。


「えへへ、ごめんね。

でもお兄ちゃんともっと仲良くなりたいと

いつも考えているからね。」


これを口にするだけで恥ずかしいけど、

嬉しくなる。温かいし幸福感が溢れます。


「フーン・・・でもその想いをあまり

出してしまうと引かれるかもしれないから

気を付けなさいよ。」


「そうだね。・・・お兄ちゃん?」


「この声・・・唯悧!?」


後ろ姿だけでしたが振り返った顔を見て

やはりお兄ちゃんでした。


「お兄ちゃんどうしたのこんな所で?」


わたしが近づこうとするとカーテンから

キレイな人が現れた。


「お待たせ、どうかな由布。」


「お兄ちゃん・・・」


それからのわたしは、涙が止まらなくなり

この場か逃げるようにしてにして走る。

目的なく長くはしる。


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