第3話 手袋


中島さん『手袋って呼ぶのをやめない?』

 

寺野くん『て、手袋?』



 

 

 

僕の名前は寺野かずお、中学3年生の男子です。

今日も中島さんが変な疑問を僕にぶつけてくるのです。



 

 

 

中島さん『手袋って何で手袋って言うの?』

 

寺野くん『そのままじゃない?手を包む袋みたいだから…じゃない?』

 

中島さん『足に履くのは?』

 

寺野くん『……あ、そうか!靴下だよね…でも【足袋】とも言うよね』

 

中島さん『そこなんだよ!寺野くんは靴下の事をわざわざ足袋って言う?』

 

寺野くん『あぁ、そういう事ね、

     靴下は、履いた時に足の指先が分かれてないやつで、

     足袋は履いたときに足の指先が分かれてるやつだよね?』

 

中島さん『この前デパートで指先が分かれてる靴下も売ってたんだよ、

     それは足袋っていう商品名で売られてなかったんだよね、

     それに今はほとんど足袋っていう言い方はしなくなったでしょ?

     だったら手袋も新しい呼び方を考えるべきだと思うの!』

 

寺野くん『う~ん…』

 

中島さん『そもそも足袋は何で【たび】って読むの?

     手袋は【てぶくろ】なんだから

     足袋も【あしぶくろ】って言うべきじゃないの?』

 

寺野くん『それは実は僕も考えたことあるけど…』

 

中島さん『だったら手袋も【てび】とか【しゅび】とかにした方がいいと思うの!』

 

寺野くん『(う~ん、どうでもいい…)』

 

中島さん『もしくは、靴下みたいな名前を手袋にも付けてあげたいんだよね!

     靴下は靴の下?に履くから靴下なんでしょ?

     だったら手袋は……なんて呼べばいいのかな?手下?手上?』

 

寺野くん『あーそうだよなぁ、足は靴下を履いて、その後に靴を履くけど、

     手には靴みたいなのは付けないよね、

     そう考えると靴下は靴があっての呼び名だよね』

 

中島さん『グローブ?』

 

寺野くん『たしか英語だとそうだよ、

     でも日本だとグローブって言ったら

     ボクシングとか野球とかになっちゃうよね』

 

中島さん『ガントレット?』

 

寺野くん『えぇ…?それは鎧の一部になっちゃうなぁ』

 

中島さん『小手?』

 

寺野くん『剣道ですね…』

 

中島さん『ミトン?』

 

寺野くん『料理するときに使うやつでしょ?』

 

中島さん『ガントレット?』

 

寺野くん『さっき言いましたよね…』

 

中島さん『えへへ、そうかーじゃあ手袋のままでいいのかなぁ…』

 

寺野くん『(お、めずらしく話をあきらめたぞ…)』

 

中島さん『……寝袋は?』

 

寺野くん『え?』

 

中島さん『寝袋は体全部を包んでるのに、何で【体袋】じゃないの?』

 

寺野くん『ね、寝る時に使うからじゃない?』

 

中島さん『それはおかしいよ!

     手袋は手を包む袋!足袋は足を包む袋!

     なのに、寝袋になったとたんに【寝る】っていう

     行動の名前になるのは何でなの?』

 

寺野くん『(あぁ…帰りたい)』

 

中島さん『じゃあ寝袋に入った状態で立ってたら【立ち袋】になるの?

     逆立ちしてたら【逆立ち袋】になるの?

     なんか寝袋だけ名前おかしくない?』

 

寺野くん『寝袋に入ってそんなことしないよ…』

 

中島さん『じゃあ【福袋】は?【胃袋】とか【レジ袋】とか【エチケット袋】とか!

     【池袋】とか【沼袋】とか【コブクロ】とか【布袋寅泰】とかは

     何で袋がついてるの?』

 

寺野くん『ギブ!ギブ!中島さん!話を元に戻そうよ!』

 

中島さん『……あぁ、えーと、何の話だったっけ?』

 

寺野くん『【手袋】の別の呼び名を考えるんでしょ?』

 

中島さん『あーそうだった、さすが寺野くん。私の話をちゃんと覚えてる』

 

寺野くん『嫌でも覚えちゃうよ…で、手袋の別の呼び名は決まったの?』

 

中島さん『……うーん』

 

寺野くん『……』

 

中島さん『……えーと、』

 

寺野くん『……』

 

中島さん『寺野くん、』

 

寺野くん『お!決まったの?』

 

中島さん『トイレ行ってくる』

 

寺野くん『え?あぁ、行ってらっしゃい』



 

 

 

 

その後、トイレから帰ってきた中島さんは、

何事もなかったかのように授業を受けていましたとさ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る