第2話 本番のできるキャバクラ
これは私が会社の新人研修で台湾に行ったときの話しです。IT系の会社に勤めることになった私は研修で台湾で行われた「世界中の新技術を発表しあう展覧会」にいきました。この展覧会の名前は覚えていません。おそらく会社の意図としては、世界中の最先端の技術を見せることで私たちの気を高ぶらせたかったのでしょう。しかし、特に印象にも残らず「すごかった」としか形容できない私の存在を考慮すると、会社の思惑は失敗しているといえます。
研修に向かった人は、私を含めた新入社員3人(私、A、B)と引率者1人(C)。展覧会を見に行ったあとは全員で食事に行き、午後9時過ぎ頃になってお開きなったと思います。引率の人は机の上のホコリにも気にかけない大柄な人で、朝8時に○○で集合しましょうと告げ、さっさとホテルへ帰りました。集合場所は今でも思い出せません。引率者がいなくなり新入社員3名だけ残され、私以外の新人A,Bはこれから何をするかと話しあいを始めした。みんなと何かしようと気にならかった私は、「ごめん、ちょっと気分悪いから」と先に帰りました。
ホテルへ向かう途中、なんだか賑やかな場所に出ました。そこは一本道の両端を沿うように店が並んでいました。そこはキャバクラとラブホテルが錯綜しており、根暗な私には近づきがたいディ○○ーランドのように感じられました。しかし、この一本道を進むと私たちが今日止まるホテルの近道になるため、面倒くさがりな私はここを通ることにしました。
きらびやかな雰囲気を意に介さず、ずんずんと進む私の数メートル先にキャバ嬢らしき女性が店先で客寄せをしていました。かわいい子がそろってるよ、楽しいよ。そんなことを大きな声で宣伝する女性に対し私は腹が立ちました。生まれて今日まで私は性経験がなく、女性と戯れたことのない私にとってそれは煽りであり侮辱でした。そんな簡単に女性とお楽しみはできねーよ。私は鎌首になり顔をした向け、店先のキャバ嬢の話など聞く気もないという意思を故意に伝えるように、彼女の前を通りすぎようとしました。するとあれだけ大声で話していたキャバ嬢は、いきなり、まるで嵐が過ぎ去ったかのようにこう囁いたのです。
「・・・本番ができるよ」
私の頭の中に衝撃が走りました。私は三白眼になり考えました。本番ってなんだ?これは罠なんじゃないか?どうして彼女は急に小さな声で?いやそれ以上に私の中に期待と希望が膨れあがるのを感じました。いけない、これはいけないと、私は自分を必死に押さえました。1、2分ほど私は近くの建物の壁により沿い自問自答をしました。そして決断を下した私は足早にキャバクラに向かいました。
でも、きゃばくらの手前まできたけど、やっぱりぼくのおもいこしを突きあげるのが先っぽで思いとどまったので、すん止めでひきかえすことにしました。ぼくはいまでもどうていです。
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