願い事は正確に

七夕、それは織姫と彦星が年に一度だけ会うことを許された日であり、その日、短冊に願い事を書けばそれが実現するという言い伝えがある。


これは、そんな願い事を叶えるために奔走する者たちの話である。




 この日、天界では願い事実行委員が頭を悩ませていた。


今問題になっているのは、次の願い事である。




「東○大学に合格しますように」




 この願い事が全国の学生から届き、今年の定員3200人をオーバーしてしまったのである。




「いつもみたいに、「今年」が入ってないやつは弾いていいんじゃないかしら?」




 織姫がセオリーに則った解決法を提案する。


ちなみに、委員会のメンバーは織姫と彦星、そして天野君である。




「しかし、残りはどうやって削る?」




 彦星が山のように積まれた短冊を見て答える。




「漢字を間違えてる願い事がありますね。 「合格」という字が「合核」になってたり」




「東○大学を受験する生徒がそんなミスするか?」




「それが結構あるんですよ。 これだけで298通ありますね」




  天野君が漢字ミスの短冊を高速で弾いていく。


しかし、それでもあと1万通近くある。




「もういつものやり方にしない?」




「そうだな。 あれを持ってきてくれ」




 天野君は、コンビニにあるようなくじ引き用の箱を持ってきた。


この中に短冊を入れ、そこから選ばれた3200通を合格とするやり方だ。




 しかし、これが終わっても、まだまだ願い事はつきないのであった。




終わり










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る