あべこべの世界(21)

「このあと公園でも行かない?」


 わたしはぬるくなったほうじ茶を飲みながら窓の外を見ていると、突然外の空気を吸いたくなった。


「雨が降っているし、敏ちゃん風邪ひいているからだめだよ」


「雨、やんでいるよ」


 雨はいつの間にかやんでいて、窓の雨しずくが太陽の光でキラキラ光っていた。


「それにわたし仮病だから」


 孝志は窓の外とわたしを交互に見て目を丸くした。


 水たまりをよけながらわたし達は歩いて二十分ほどの公園へとゆっくり向かった。


 軽く散歩するのにちょうどよい距離だ。


 いつもの桜の木のある家の前を通りかかる。


 来週初めぐらいには咲き始めるだろうか?


 週末はちょうど満開になるかもしれない。

 

 ちょうど近くの女子校の下校時刻にあたったようで、次から次へと可愛い制服に身を包んだ女子高生たちが歩いてくる。


 チェックのプリーツスカートに赤いリボンタイ、わたしの通った高校もこれくらい可愛い制服だったらなとぼんやり見ていたら、わたし達とすれ違った女子高校生の一人が孝志をちらりと見たのにわたしは気づいた。


 そのあと何人もの子がちらりと孝志を盗み見るようにし、隣なりの子の耳元でヒソヒソとなにかを語りかけ、嬉しそうにクスクス笑っている。

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