あべこべの世界(4)
世のなか美女と野獣とかその反対とか、そんなカップルは稀で大半が同じレベルで付き合っている。
わたしと孝志もその大半のカップルの中の一組ってこと。
「昨日はそんなに飲んだんだ?」
孝志はウコンを袋から取りだし、丁寧にもフタまで開けてくれる。
「こういうのって、普通飲む前に飲むんじゃないっけ?」
と首を傾げながら。
わたしは黙ってウコンを受け取ると液体をいっきに飲み干す。
喉も乾いていたし、このコンビニで売っているウコンの味はけっこう好きだ。
孝志はぐるりとワンルームを見まわす。
「ちょっと窓開けてもいい?外いい天気だよ」
と、部屋でひとつだけの窓を開けた。
春らしい風が部屋に吹きこみ、壁にとめてあった雑誌の切り抜きがパラパラと音をたててゆれた。
アルコールが苦手な孝志にこの二日酔いの気だるさは分からないだろう。
私はゴロンとベッドに横になりながら、切り抜きの女性モデルを眺めた。
こんなふうになりたいといつだったか壁に貼ったのだ。
何かの雑誌で自分のなりたい女性の写真を目のつくところに貼って、毎日眺めると自分も同じようになれるというなんとかの法則のとおりに。
「敏ちゃん、低カロリーなものがいいってゆうから、おでん買ってきたよ」
あれくらい痩せていて美人でスタイルもよかったら人生なにか変わるのだろうか?
おでんか。
あんまり好きじゃないのだけどな。
うん。
人生変わるに決まってる。
「わーい。おでん。牛すじ買ってくれた?低カロリーでお肌にもいいのよね」
私は寝転んだまま足で枕を天井に放り投げ、また足でキャッチした。
さぞかし楽しい人生なんだろうな。
レンジで温めたすぎて熱くなりすぎたおでんを息をふきかけふきかけ食べる。
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