あべこべの世界(3)

なにか買って行くね。なにがいい?


 昨日食べた物を思いかえす。


 焼き肉とビールで乾杯し、スペインバルでワイン、カラオケではまたビールにポテトフライや唐揚げと、考えただけでも恐ろしいほどのカロリーオーバー。


 今日は真剣にダイエットしなきゃ。


 なにか、カロリーの低いものをお願い


 文字を打ちながら玄関入ってすぐにある冷蔵庫をあけ、中に水だけしか入っていないのを確認すると、


 ゼロカロリーのコーラとウコンもお願い


 最後にウサギをそえて送信した。


 床に脱ぎ散らかした服を丸めて洗濯機の中に放りこみ、気持ちていどに狭い部屋を片付ける。


 二日酔いで頭は重く少し胸やけもする。


 テレビをつけて服を着替える。


 着替えるといっても最近休みの日にいつも履いているデニムとボーダーのシャツ。


 体がむくんでいるせいか、それとも1.5キロの体重増加のせいかデニムがきつい。


こんなのじゃ全然リラックスできない。


 わたしはデニムを諦め、グレーのニットのワンピースをクローゼットから取り出した。


 どこも体を締めつけないらくな服。


 孝志が来るから着替えるというより、休みの日にずっとパジャマのままいる自分が嫌だった。


 それに慣れてしまったらかなりヤバイ気がした。


 ブラシを通してない髪を、鏡ではなくテレビを見ながら無造作に束ねていると、玄関のチャイムが鳴った。


「開いてるー」


 さっき冷蔵庫の中身をチェックしに行ったときついでに玄関のカギも開けておいた。


「今日はすごくいい天気だよ、敏ちゃん」


 風と共に玄関のドアを開け孝志は入ってきた。


 コンビニの袋を両手にさげ笑っている。


 眼鏡の奥の細い目は切れ長とかいうイケてる感じではなく、開いているのか開いてないのか分からないような人の良さそうな垂れた細目。


 団子鼻におたふくのような赤い小さいおちょぼ口。


 そして顔全体あばただらけ。




 不細工だ。



 イケメンからはほど遠い。


 でもこれが私の彼氏、孝志なのだ。

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