短くて長い誰かの話。

文月千香子

終わらない世界の終わりの話。

シングルベッドで足を絡めて眠る。


外はまだ薄暗い。


じっと。顔を見ていた。


本当に。自分には素敵すぎる人である。


起きているときは綺麗なのに、一度眠ると子供のような愛らしさを見せる。


その丸い頬を撫でてみた。


「.....ん。」


と声を漏らして、幼子が美しい女性になる。


「...おはよ。」


寝起きの少しくぐもった声が鳴る。


「おはよう。」


この会話を毎日続けられることが幸せでならない。


この人と一緒なら、明日世界が終わるとしても『幸せだった』と死ぬことができる。


「ねぇ、明日世界が終わるとしたら、どうする?」


僕が彼女に問うた。


「このままでいい。丸一日、このまんま。」


そう答えた彼女が、僕の手に小さく柔らかな手を絡ませた。


暖かい。


僕は彼女に小さくキスをして、愛おしいその顔を見つめながら、もう一度眠りについた。


これは、酷く幸せな、愛の話だ。

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短くて長い誰かの話。 文月千香子 @n-suda

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