16bit≒Destruction

氷取沢 綾音

俺を殺して僕も死ぬ

 旅立ちはいつも雨だった。

 この僕が歪んでいるようだった。

 春雨程度のはずだったのに、降りしきる歪んだ現在に目眩がしていた。

 ただ笑って、馬鹿みたいに笑って過ごすことがそんなに可笑しいのか。



 スマートフォンという機械が、この世界の異世界へと誘ったのは年明け頃からだった。

 

 暇なら、手が空いたら、会話が途切れたらスマホを弄る。

 コミュニケーションなんて得意な筈だった。

 『今日はいちんち雨だね』

 『やまないっぽいね』

 仲良さげな女子が話してる狭間で僕はスマホを弄っている。


 この物語は現実だ。この仲良さげな女子も、先週見たアニメの美少女が転校してきたという事になっている。

 雨粒は痛いし、理想は叶いながら僕を蝕んだ、僕を追い詰め――

 

 『佐倉なにぼっとしてんだ?』

 「! いやなんでもない」

 『お前なんだっけ、16bit すぃんどろーむ? とかいうので変わっちまったな』

 「俺は俺だよ、あとすぃってなんだすぃって」


 俺は全く変わっていないのだ。

 ちょっとの事で笑っちゃう、いつもの俺だ。

 俺は僕だ。だからいつまでも、これからも、周りの友達は僕を知らない。


 ここには僕が居ないから。

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16bit≒Destruction 氷取沢 綾音 @htrsw_ayane

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