雌
メールの内容。これは実に意味不明だった。『ボクはアナタを救いたいんです。明日会えませんか』と。そう書かれていた。訳が分からない、私を救う?何から。でも当時の私は、好奇心のようなものに任せて、誘われるがままにナイトに会ったのだ。それが、最低の過ちだった。
待ち合わせ場所についた。ひとけのない路地裏。ナイトは、全身黒い服を着ているので、それを目印にしてくれと私に頼んでいた。しばしば待っていると、それと似たような風貌の、男性にしては少し華奢...というよりは、私とあまり背丈の変わらない女の子のような印象を受けた。パーカーのフードをかぶっていたため、こちらから顔が見えないのが、全身黒ずくめなのに相まって一層怪しさが増していた。なんだろう、普段はこんなこと思わないのだが、ものすごくミステリアスな雰囲気だったので、興味を持ってしまった。いつもならなんの考えも持たずに、ラブホテルに直行するのだが、ひどく間が空いてしまった。
「ねぇ澪ちゃん、君は、なんでこんな、自分の体を売るような事をするのかな」
ナイトはそう言った、言われた瞬間物凄く驚いた。いや、ナイトが言った内容そのものに驚いたのではなく、ナイトの声が、女のそれだったからだ。
「あぁ、まぁこんなところで立ち話するよりさ、カフェ。早く行こ?」
私の前に立っているこの雌声の男は、そう告げて、私を強引にカフェへと連れ出したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます