メールの内容。これは実に意味不明だった。『ボクはアナタを救いたいんです。明日会えませんか』と。そう書かれていた。訳が分からない、私を救う?何から。でも当時の私は、好奇心のようなものに任せて、誘われるがままにナイトに会ったのだ。それが、最低の過ちだった。


待ち合わせ場所についた。ひとけのない路地裏。ナイトは、全身黒い服を着ているので、それを目印にしてくれと私に頼んでいた。しばしば待っていると、それと似たような風貌の、男性にしては少し華奢...というよりは、私とあまり背丈の変わらない女の子のような印象を受けた。パーカーのフードをかぶっていたため、こちらから顔が見えないのが、全身黒ずくめなのに相まって一層怪しさが増していた。なんだろう、普段はこんなこと思わないのだが、ものすごくミステリアスな雰囲気だったので、興味を持ってしまった。いつもならなんの考えも持たずに、ラブホテルに直行するのだが、ひどく間が空いてしまった。


「ねぇ澪ちゃん、君は、なんでこんな、自分の体を売るような事をするのかな」


ナイトはそう言った、言われた瞬間物凄く驚いた。いや、ナイトが言った内容そのものに驚いたのではなく、ナイトの声が、女のそれだったからだ。


「あぁ、まぁこんなところで立ち話するよりさ、カフェ。早く行こ?」


私の前に立っているこの雌声の男は、そう告げて、私を強引にカフェへと連れ出したのだった。

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