騎士

家に着いた。いつものように真っ暗でガランとした空間だけが私を迎えていた。母は私が幼い頃に死んでしまった。父はいるが、たまにしか帰ってこない。金銭面での支援は少なからずしてくれているが、家事はすべて私の仕事だ。無駄に広い一軒家に、私1人。空間を持て余している。2階は埃だらけだろう。使っていないから掃除をする気にもならない。


ぐぅ...と、腹がなった、そういえば今日は水と精液以外何も口にしていない。


けれど、まずは風呂を済ませよう、このままでは気持ちが悪い。


土曜なのに女子高生というブランドをアピールするためだけに着飾った制服を脱ぎ、シャワーを浴び、湯船に浸かった。人肌の温かみではない、無機質な温かみは、やけに心地がよかった。身体は自分が思っている以上に疲労していて、湯船に浸かった瞬間身体全身が溶けそうてしまいそうな程に癒された。家の中では、誰に気を使うでもなく、自由に行動ができるから、心底気が楽だ。


うとうとしていると、鈍い音のバイブレーションが浴室に響いた。防水機能付きなので湯船に浸かっている間はいつも電子書籍版のマンガを読むのが日課になっていた。風呂場にはいつもスマートフォンを持って入っている。


バイブレーションの正体は、1通のメールだった。援交の相手はいつも掲示板で見つけている。良さそうな人とだけ個人的なやりとりをするようにしていた。昨日知り合った“ナイト”とかいうやけに中二病な名前の人からメールが届いていた。開いてはみたものの、読むのがめんどくさい。今日はやけに眠い。返信は後にしよう。

ご風呂からあがり飯を食べ、その日はそうそうに寝てしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る