第4話 いつまでも

「美和・・・君はもしかして・・・」

非現実的だが、それを確かめるには美和の口から聞きたかった。


「気付いていてくれたんですね。ご主人さま」

「ああ、出来れば間違いであってほしかったけどな」

美和の口から、真実が告げられる。


「その通りです。私はご主人さまが小学生の頃に、飼っていて下さった、猫のミケです」

「やはり・・・そうか・・・」

「私は、交通事故で命を落しました。でも、ご主人さまは最後まで私を助けようとしてくれた。

それが、嬉しかったです」

美和は、とても寂しげな笑顔を浮かべた。


「私は、雲の上からご主人さまを見守っていました。

そして、少しでいいので、ご主人さまのそばにいたかった。

そして、魂をこの体に、入りこませたのです」

「入りこませた?」

「この体の本来の持ち主、つまり本当の豊杉美和は、病気で亡くなっています。

ご両親は悲しみました。」

「確かにな」

自分より先に子が死ぬのは、一番の親不孝だ。


「なので、あの世で美和さんに嘆願されました。私もご主人さまのそばにいたかったので。

承諾しました」


「そっか」

「ご主人さまは、私がいつからミケだど気付いたんですか?」

「動物園や、水族館などの、デートを頑なに拒んだところだ。

ミケも、単独でなら平気だったが、たくさんの動物が集まる場所は苦手だったからな」

「それだけでですか?」

「いや、その時は。『似てるな』としか、思わなかったよ。」

「それならいつですか?」

「美和が会ったことのないはずの、俺の両親を知っていた。

兄弟姉妹や、親戚のいない俺にとって、俺の両親を知っているのは、美和、

いいや、ミケしかいないからな」

「そうですか」

美和・・・いや、ミケはため息をついた。


「俺の告白をOKしたのは、恩返し・・・だな」

「はい」

「で、恩返しはいつまでなんだ?」

「ご主人さまは、カッツェの意味はわかります?」

「ドイツ語で、猫だろう?」

「そうです。」

どういう関係かあるのだろう?


「ご主人さま、日本人とドイツ人は国民性が似てるんです」

「よく言うな」

「戦時中は、同盟を結んでいました」

「習ったよ」

「つまりです」

「つまり?」


「ご主人さまと私は似ています。

似ているものは、離れられない運命なんです」

「というと?」

「私の気のすむまで、恩返しさせてもらいます。いいですね」

「わかったよ。歓迎だ。そのかわり・・・」

「そのかわり?」

「ご主人さまと、敬語はやめてくれ」


恩返しでもなんでもいい。

また、一緒に暮らせるのが嬉しかった。


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カッツェ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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