30話 VS赤薔薇姫(1)

 赤薔薇姫との戦闘は既に始まっていた。

 彼女の能力はインパクト。武器に衝撃の効果を付与して攻撃の度にクレーターを作っていく。


「くそっ」


 赤薔薇姫の剣が頬を掠る。

 Sシステムはもちろん使用している。

 しかしそれでも見切るのがやっとだ。

 彼女の剣は桁違いに速い。ステータスに差は無いはず。

 それなのに……


「剣が速いんじゃないわよ。避けにくい位置を突いてるの」


 今回の追加ルールはステータスの統一と常に互いが転移と攻撃が使用可能。

 完全にフェアな条件の一騎打ちだ。


「しかしブラック・リリーの自動HP回復も厄介ね!」

「ブラック・リリーじゃなくて黒百合姫だ!」


 何度も剣は掠っていく。

 普通ならダメージが蓄積されて負けているところだろう。

 今回ばかりはこの能力に救われている。


「ったく! アイテムを拾う余裕もねぇな!」


 俺は赤薔薇姫の突きを剣の腹で抑える。

 それから赤薔薇姫を蹴ろうと足を伸ばす。

 しかしそれを見越した赤薔薇姫は俺の蹴りを受ける前に一歩下がり避ける。

 俺はそのままバク転しながら銃を取り出して雫とバトンタッチ。

 雫が空中で回転中という不安定な体勢ながら的確に赤薔薇姫を狙って弾丸を3発打ち込む。

 しかし赤薔薇姫は弾丸を自慢の剣で全て切り落とす。


「もらった!」

「これを待ってた!」


 赤薔薇姫が素早く踏み込んでくる。

 それに対して雫が弾丸を二発打ち込む。

 最初の一発を一刀両断して、二発目を剣を右に振って払う。

 そのタイミングで雫がもう一発撃って剣の腹に銃弾を当てる。


「この剣だって弾丸を弾く度に耐久値が減ってるはず。そして私の計算通りだとこのタイミングで武器が壊れる!」


 雫が言った瞬間に赤薔薇姫の剣が砕け散る。

 それから雫は俺と再度バトンタッチ。

 そのまま赤薔薇姫に走りこんで、剣を出して斬る。

 しかし赤薔薇姫は予想外の行動をした。

 なんと剣を指と指で挟んで止めたのだ。


「武器が壊れるのは計画通り。そうしなきゃあなたに一撃を叩き込めないもの」

「まさか!」


 完全にやられた。

 赤薔薇姫は俺を踏み込ませるためにワザと剣を壊したのだ。

 それを俺達が隙だと思うのを見越して……


「喰らいなさい!」


 赤薔薇姫が派手に右ストレートを叩き込む。

 素手の攻撃は普通なら大したダメージにはならない。

 しかし赤薔薇姫の能力のせいで話は大きく変わってくる。

 彼女の能力インパクト。

 それを拳に付与して殴れば体は風船のようにはじけ飛ぶ。


「あぶねえ……」


 俺は銃そのもので彼女の拳を受け止めた。

 それによって銃が爆発して二人とも吹き飛ぶ。

 だが、赤薔薇姫はすぐに体勢を整えて腰から短剣を出して飛び掛かる。

 俺もすぐに剣を構えて赤薔薇姫の剣を受ける。


 ――カキンッ。


 そんな金属音が辺りに響き渡る。

 すぐに赤薔薇姫は剣を引いて連続的に突いてくる。

 もちろん俺も全て捌いていく。


 キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン


「よくついてこれるわね」

「キンキンうるせえな。ビールが飲みたくなるだろ」

「未成年者の飲酒はこの国じゃ禁止よ!」


 彼女のナイフが頬を掠る。

 こちらが若干押され気味か。

 そろそろ搦め手を入れねぇとな。


「それならキンキンに冷えたコーラで我慢してやるよ!」


 足を滑らして、赤薔薇姫のバランスを崩しにかかる。

 しかし赤薔薇姫は跳躍して回避する。

 俺は赤薔薇姫の真下に転がり込んで落ちてきたところを狙おうとする。

 それに対して赤薔薇姫は空中で一回転して頭から落ちてくる。

 ご丁寧にナイフを構えながら。

 そして空中で赤薔薇姫と俺の剣が交差する。

 赤薔薇姫は剣をナイフで押して、その反発を利用して再び飛んで一回転。

 次は足から落ちてきて俺の剣を遠くに蹴り飛ばす。


「しまった!」

「逃がさない!」


 赤薔薇姫がこちらに突撃してくる。

 俺はギリギリのタイミングで転移を使ってこの場から逃げ出した。


「……逃がしたか。でも次こそは首を跳ねる」


 移動先は墓地だ。

 とりあえず俺は地べたに座り一息つく。


「つえぇ……」

「なにあの化け物……」


 俺と雫の意見は完全に一致。

 Sシステムを使って互角だ。

 ぶっちゃけSシステム無しなら何度ループしても勝てる気がしねぇ。


「司君。それと互角じゃなくて押され気味」

「そうだな。実際、転移による撤退まで追い込まれたしな」


 さて、どうやって赤薔薇姫に勝つか。

 あいつの実力は折り紙付きだ。

 普通に戦っても勝てる確率は三割といったところ。

 最後にして最強のラスボスだ。


「時間をかければかけるだけ不利になる……」

「雫。それはどういうことだ?」

「剣を交えれば交えるほど動きが速くなってる。恐らく戦いの中で成長してる」

「まじか……よ……」

「司君も心の奥底では勘づいてたでしょ?」

「そうだけど、いざ言われると……な?」

「まぁその気持ちも分からなくもないよ。あれ以上、強くなるなんて正直言って考えたくないもん」


 しかし事実は事実。

 事実を受け止められず嘆くのは無能のすることだ。

 それを理解して次の一手を考えないとならない。


「とりあえず銃や剣を再度拾わねぇとな。それとアイテムも少し拾いたい」


 協強力なアイテム一つで戦況は大きく変わる。

 特に互角の現在ならなおさらだ。


「……っとその前に魔物のお出ましか」


 のんびりしてると周りに骸骨兵がやってくる。

 今の俺たちは丸腰で素手で戦うしかないな。

 だけど今の俺はこの程度の相手に素手だろうが遅れを取ることはない。


「司君。あそこに剣があるよ」

「あれは和刀燕涙つばめなみだじゃねえか」


 TEQで最強の攻撃力を誇る和刀シリーズ。

 その一つをここで見つけられるとは運が良いな。

 俺は軽く舌なめずりをして一気に走る。


 それと共に骸骨達も一気に動き出す。

 最初に一匹の骸骨が俺の目の前に現れて、行く手を阻む。

 しかし俺は足を止めることなくそのまま駆け抜ける。


「わりいな。相手してる暇はない」


 そして跳躍する。骸骨が剣を振り下ろす。

 剣は当たることなく虚空を切り裂いた。

 そしてその剣に乗っかり、そのまま幅跳び。

 着地地点にいる骸骨の頭を踏み台にして二度目の幅跳び。


「前方82cm! そこまで飛べる?」

「いや、無理!」

「それなら地面に右肩から降りて、転がって!」


 俺は雫に言われた通りに動く。

 派手に右肩から転がり落ちてその勢いを殺さずに骸骨の股を抜ける。

 そうして起き上がり、最後は全力疾走で剣まで走る。


「待たせたな」


 そうして剣を握る。

 さて、少し肩慣らしといこうか。


『攻守交代の時間です。赤薔薇姫様に攻撃権が移ります』


 もうこんな時間か。

 今回のルール的に攻撃権は転移が可能かどうか、相手の位置が分かるかどうかしか関係しないから大した問題ではない。

 もうそろそろ赤薔薇姫が来るから、それに備えないとな。

 でも今はその前にこの骸骨共だ。


「無双剣・神殺し」


 俺は剣を抜いて、真横に振るう。

 それと共に骸骨が全て青い粒子になって消えていく。

 TEQには技が存在する。俺のクララ・ストライクとか良い例だろう。

 技の発動に求められるのはリアルでの技術だ。


「なに今の……」

「俺の新しい形だ」


 無双剣・神殺し。

 不安定な空間を切り裂き、激しい剣風を起こす。

 Sシステムを使えるようになって覚えた技だ

 ここは電脳空間。現実と違って微妙に空間が不安定な場所が現れる。

 そこを切り込むだけでいい。


「さぁ来いよ。赤薔薇姫」


 今のままじゃダメだ。

 雫におんぶにだっこじゃダメだ。

 だから俺は次のステージに行く。

 雫に釣り合う男になるように。


「ワレ。サイキョウナリ」

「おいおい。死神かよ……懐かしいな」


 そんなことをしてるうちに死神が現れる。

 少し前の俺が苦戦した魔物。

 TEQでもトップクラスの強さを誇る魔物。

 そんな死神が一気に鎌を振るう。


「……おせぇ」


 俺は右手に握った剣で死神の鎌を弾く。

 そんな時だった。何かが俺の右を駆け抜けて、死神に連続的に剣舞を叩き込む。


「紅色の舞」


 鮮やかな八連撃。

 それに死神が呻き声を漏らした。

 それから赤いワンピースの少女が降り立つ。


「手を貸しましょうか? 黒百合姫」

「そんなのいらねぇよ……赤薔薇姫!」

「そうですか。それなら死神なんてさっさと倒して戦いましょう?」



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