20話 VSイノセンス・ドリーム
「あなたがブラック・リリー?」
「俺はお前を倒す!!」
幾万もの炎の矢を出してイノセンス・ドリームに向かって打ち出す。
しかしイノセンス・ドリームは冷気で炎を全て消し去っていく。
だが俺は怯むことなく、そのままイノセンス・ドリームの腹に拳を一撃叩き込む。
「グハッ!」
「灰になりやがれ!!」
そのまま地面から炎の柱を出す。
あまりの高熱で空気を熱して、その空気が体を熱して自分ですら熱いと思い始める。そんな炎が宮殿の上まで円柱上に空をめがけて伸びている。
もしも当たったら間違いなく黒焦げになる。
しかし、そこにイノセンス・ドリームは無かった。
「転移か!!」
「正解。それと良いことを教えてあげる」
「なんだ?」
「あなたの友人かしら? たしか名前は雨宮雫だったかしら? 早くしないと女子としての尊厳が奪われちゃうかもよ?」
「なにをした!!」
わざとらしく俺は叫ぶ。
ここで全て説明する前に自殺したら怪しまれてしまう。
あくまで自殺はこいつの口から吐かせてからにしなければならない。
「ちょっと男を雇って――レイプするように命じただけよ」
俺はすぐに炎で身を焦がす。
その瞬間に嫌なファンファーレが鳴り響く。
『勝者。イノセンス・ドリーム』
俺は負ける。
計画通りに負ける。
すぐに走って雫を探しに行く。
それからしばらくすると雫とグルグルに巻かれた男。それに赤薔薇姫がいた。
「二週目だから場所も把握してたから犯人の捕縛も出来たわ。雫ちゃんに指一本触れさせる前にね」
「赤薔薇姫!! タイムリープには成功したんだな!?」
「もちろん。雫ちゃんにも影響は無さそうよ。ちゃんとイノセンス・ドリームをボコボコにしてきなさい。ブラック・リリー」
「あぁ!!」
そうして再び三人でキスをする。
また意識が吹き飛ぶ。
目が覚めると、いつも通りの宮殿だ。
「あなたがブラック・リリー?」
目の前には大胆に胸元を露出させてメイド服に身を包んだ紫髪の女。
イノセンス・ドリームがいる。
「イノセンス・ドリームか。それじゃあTEQしようぜ?」
「ふふっ。格の違いを教えてあげるわ」
先程と同じように炎の矢を放つ。
しかし冷気でイノセンス・ドリームはそれらを打ち落としていく。
「その程度じゃダメ」
「――そうかな?」
だが俺はそれを更に上手をいく。
俺は熱風を起こしてイノセンス・ドリームを吹き飛ばす。
「きゃっ!!」
俺はすぐにイノセンス・ドリームに背を向けて走り出した。目指す先は階段だ。
今いるのは宮殿エリア2階で宮殿エリアの一階は何も無いが2階には武器が置かれてる。
「逃がさない!!」
しかし目の前を氷の壁が遮った。
間違いなくイノセンス・ドリームの能力。
だが想定内なのも事実。
俺は転移を使って氷の壁を抜けて、そのまま階段を駆け上って2階に登った。
「……日本刀か!」
2階に入ると、俺は刀を視認した。
すぐに刀を拾おうと走るが目の前にメイド服の女が現れて、氷の矢を無数に飛ばす。
俺はすぐに炎の盾を作って身を守る。
「逃がさないわよ」
「くそっ! 日本刀さえあれば……」
「これかしら?」
イノセンス・ドリームが日本刀を拾う。
彼女の意識が一瞬でも日本刀にズレた。
それが俺の狙いだ。
「――とでも言えばお前は釣れるよな?」
「しまった!!」
俺は炎をムチのようにして振るう。
最初に足元を滑らせ、次に左上段から振り下ろすように鋭く一撃。
だが、イノセンス・ドリームはそれに反応して全て避けていく。
最初は飛んで、次の一撃は空中で氷の盾を作って防ぐ。
「オムツが甘いぜ」
俺はその間にイノセンス・ドリームの上空に転移して腹にかかと落としを叩き込み、すぐに右手で手首を激しく叩いて日本刀を手放させる。俺は空中に舞った日本刀を掴んで自分の物にしていく。
「どうした。イノセンス・ドリーム。そんなもんか?」
「ふっふっふ。あなたの大切な人、雨宮しず――」
俺は全て言わせる前に間合いに入り、イノセンス・ドリームの右腕を跳ねあげる。
「きゃっ!!」
飛んだ右腕はぴくぴくと地面を跳ねる。
しかしイノセンス・ドリームを見ると既に右腕は回復している。さすがゲーム内と言ったところだな。
「悪いがお前が雫をレイプしてくるのは予測済みで手は打ってあるんだよ」
「な、なんだと!?」
「最初に言っただろ。TEQをしようってな。不正要素なんて一切ないTEQをしようぜ? イノセンス・ドリームさん」
二発素手で殴って、日本刀で一撃。
削ったHPの合計は83~90辺りだろうか?
少なくとも日本刀でもう一度斬れば勝ち。
また、五回くらい直接殴っても倒せる。
「クソガキ!! まさかここまでやってくるなんてさすがに予想外!!」
「……来いよ」
「いいわ! たしかに私は番外戦術がメインだけど 普通に戦っても強いのよ!!」
イノセンス・ドリームが転移を使用して視界から完全に消える。
俺はすぐにしゃがむ。
その瞬間、頭の上を氷の剣が通った。
「今のを避けるか!!」
「転移して離れて再度近づいて奇襲。誰だって思い付くだろ」
俺は日本刀を振ってイノセンス・ドリームの氷の剣を砕いき、腹に蹴りを入れて吹き飛ばす。
「は、はやい!!」
「お前が遅ぇんだよ。ホワイターなら今のは間違いなく避けてたぞ?」
しかし受け身を取ってダメージを最低限に抑える辺り、技術は間違いなくある。
まともにやりあっても勝率は五分五分だな。
今は俺の方が有利だが、そろそろ相手も俺の動きに慣れて来た頃合いだろう。
それに氷や炎のダメージは致死量に値する。
つまりここからの逆転だって容易だ。
「あら言うじゃない? それと一つ良い事を教えてあげる。雫ちゃんに送り込んだ男ってSP経験があって普通の民間人じゃ勝てないわよ」
「なるほど。やっぱりそれに意図も簡単に倒す辺りあいつはおかしいな」
そろそろ、こいつの声にも飽きてきた。
いい加減に決着をつけるか。
俺は転移して、その場を離れた。
「ふぅ」
転移した先は森。
俺は適当にぶらりふらりと歩く。
恐らくイノセンス・ドリームは背後からの奇襲とかを警戒している。
だから、ここは敢えて攻めない。
俺はそんなことを考えながら剣を降って近くにいたゴブリンの首を跳ねる。
ゴブリンは力無く倒れてすぐに青い粒子となって消えていく。
「……しかし相手にアイテムやステ上げの時間を与えるのも愚策だな」
俺は近くの木に登る。
そして頂上に乗るとマップを開いてイノセンス・ドリームの位置を確認する。
「場所は宮殿から動き無し」
そうして軽く火の竜を作り、そのまめ宮殿目掛けて打ち込んでいく。
紛うことなき超遠距離射撃である。
火の竜は窓から宮殿に入り、そのままイノセンス・ドリームを狙っていく。
しかし途中で炎龍の気配が消える。
恐らく手を打たれたのだろう。
「転移指定出来るのは縦と横の2次元で高さ指定は不可。つまり転移してもイノセンス・ドリームが出てくるのは俺の足元だ」
何度か超遠距離射撃をしていれば痺れを切らして出てくるはずだ。
仮に転移で逃げるなら距離をとりながら再び射撃すればいい。
しかし前に姉に射撃について教えてもらってよかった。姉のいる米国の方でもTEQは流行っていて姉はかなり凄腕のスナイパーとかいう話も聞いたりする。
そんな姉から講義を受けてる俺からしたらこのくらい朝飯前だ。
「よし、転移したな。落ちろ」
そんなことを考えてるとイノセンス・ドリームが足元に転移したのを確認する。
俺はすぐに炎の矢を作って地面に向かって打ち込んで森を焼き尽くしていく。
しかし火の手はすぐに氷で止められる。
だが、火の手を止めることに気を取られたら最後だ。
俺が飛び降りて、そのままイノセンス・ドリームの顔に蹴りを食らわせてノックアウト。
「ま、待って!!」
「まだHPが残ったか」
俺は剣を構える。
これで試合も終わりだ。
お前の負けだ。イノセンス・ドリーム。
「私を抱いていいから! ほら、おっぱいも大きいし悪い提案じゃ……」
「悪いが俺には雫っていう嫁がいるからな」
そうしてイノセンス・ドリームの心臓に剣を突き刺して俺は勝負終えた。
華やかなファンファーレが流れる。
『勝者。ブラック・リリー』
最後は呆気なく勝負が着いた。
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