13話 VSホワイター(1)
目を覚ますと、いつもの森。
目の前には黒いロリータ服に身を包む少女。
何度も見慣れた光景でいい加減、飽きた。
「……いるんだろ。ホワイター?」
「おやおや、ボクの存在に気付いてるのか」
俺が話しかけるとホワイターが背後の木影がから現れてくる。
近くにはうちの黒姫とは対象的な白いロリータ服に身を包んだ少女がいた。
「なぁ――ずっと考えてたんだ。ホワイターはなんでTEQがそんなに強いんだ?」
「ボクには夢があって――負けられない理由があるからさ」
「そうかよ! 逃げるぞ、黒姫!」
俺はすぐに転移して街へと移動する。
ここからは時間との戦いだ。
前回のループで確認した主要アイテムの位置を細かく黒姫に伝えて回収させに行く。
また、途中で何体か緑の魔物も倒してHPを上げておく。
「時間は……あれから、まだ23分だ!」
そして食料庫の前に着くと、人形兵を作っては食料を食べて回復してという動きを繰り返して、ひたすら人形兵を作って放っていく。
「言われたアイテムを全て整えました!」
黒姫がアイテムを持って戻ってくると俺は黒姫にやる事を伝えていく。
黒姫がやる事は白姫との一騎打ち。
だけど、黒姫は時間が来るまでに死ななければいいのだ。
つまり、『指示はなんとしても生き延びろ』
「勝ちに行くぞ!!」
「はい!」
俺は先程と同じ森に転移する。
目の前には服が乱雑に乱れた白姫とズボンを脱いだホワイター。
誰が見てもナニをしてるのか一目瞭然。
「……ブラック・リリー?」
「動揺するな。これはヤツらの作戦だ」
頭の冷えてきた今なら分かる。
ホワイターは誰よりも慎重な男だった。
そして勝負において絶対に油断をしない。
「や、やめ……て♡」
「ブラック・リリー! こんなのって!」
ホワイターはゲーム中に強姦なんて舐めたマネは絶対にしない。
恐らく、これは俺に動揺させるための罠。
もっと言うなら……
「ホワイターの方の姫。演技をやめたらどうだ?」
「……いつから気付いたの?」
「お前の顔を見れば分かる。お前、本気で嫌がってねぇし実はこれ強姦じゃなくて同意の上なんじゃないか?」
ホワイターが姫から離れてズボンを上げる。姫も乱れた服を整えていく。
「ちょっと見くびってたよ。ブラック・リリー。君の言う通りさ」
しかし、白姫は何故ここまでホワイターと親密な関係を築いている?
初対面から十分程度しか経ってないはずだ。
「ホワイター様……」
「白姫。大丈夫。ボクは負けない」
ホワイターが弓を構える。
それと同時に俺は黒姫に命じる。
「走れ!」
「はい!」
その言葉と共に矢が飛んでくる。
矢は俺の頭の上を流れていく。
そこで俺は黒姫を逃すようにして再度、ホワイターと向かい合う。
「へぇーボクとやり合うっていうんだ?」
「あぁ!」
剣を構えて、ホワイターに攻撃しようと飛びかかるが、その間に白姫が割って入ってきて彼女の剣で俺の剣を受け止める。
「くっ!」
「隙あり! ブラック・リリー!」
その一瞬を逃がさないのがホワイター。
彼はすぐに俺の腹をめがけて矢を放つ。
しかし、俺はそれを受け止める。
ホワイターの攻撃は素早く回避は無理。
それなら受けてしまえばいい。
「大前提を忘れてたぜ」
これはTEQで実際の殺し合いじゃない。
TEQは守り側は攻撃側に攻撃してもダメージは入らない。
そして、それは能力と言えど例外ではない。
つまり俺が攻撃ターンのうちは毒が俺に入るということはありえない、
今までのループでは俺は守りのターンの時に攻めていて、その時の人形兵の攻撃は一切ホワイターに効かなかった。
それはホワイター側も同じ。
黒姫になら毒は効くが俺には効かない。
「ダメージが入らないと分かっていても、攻撃されたら人間という生き物はその事実を忘れて回避しようとする。その隙を突いて黒姫を倒そうと思ったんだけどダメみたいだね」
「つまり威嚇射撃か……」
「そういうこと。それに姫ルールの原則して姫はプレイヤーから100m以上、離れるのは不可能。遠くには逃げられないはずだから焦ることはない」
本来ならここで逃げたいが作戦の為には常にホワイターの動きを抑制していなければならない……
俺がホワイターから目を離したら負ける。
『攻守交替の時間です。 ホワイター様に攻撃権が移ります』
そして、やってきた攻守交代の時間。
今から三十分、逃げ切れるか。
しかし逃げ切ると言っても振り切ってはいけない……
ホワイターに『もしかしたら倒せるかも』と思わせて常に追わせるのが作戦の肝だ。
そこに全てがかかってる
「逃げるぞ! 黒姫!」
「分かりました!」
それから黒姫と共に飛んでくる矢を回避しながら森を走り抜けていく。
瞬発力は俺は微妙に上回っているため追いつかれることはまずない。
ただ黒姫は別だ。
「黒姫。そのまま走れ!」
俺は止まって、飛んでくる矢を弾き落とす。
そして拾った煙幕玉を使って目くらましをする。
「くっ!」
「もらった……」
「甘い!」
煙幕の中、そのままホワイターに近付いて白姫の胸に剣を突き刺そうとするがホワイターの右手によって止められる。
俺はすぐに剣を手放して、再び逃げ出す。
最初から逃げなかったのはワケがある。
ホワイターが諦めて逃げないためだ。
俺は常にホワイターの視界内に留まり続けて、もしかしたら殺せるかもと思わせ続けなければならないのだ。
「待て!」
俺は走ってすぐに黒姫に追いついて彼女の安否を確認する。
黒姫は俺に言われた通りに走り続けていて掠り傷一つ受けていないようだった。
もしも姫が掠り傷を受けようものなら毒が回って終わりだ。
「黒姫。基本的にお前は走れよ」
「分かってます!」
「俺は何度もホワイターに仕掛けては距離を取って、また仕掛けるって動作を繰り返す」
姫はルールの都合で俺の100mにしかいられない。だから俺は何度かヒットアンドアウェイを繰り返していく。
少なくとも森を出るまではそれを続ける。
「ブラック・リリー! 森を出たら……」
「森の外は荒野だ。そこでお前は白姫と戦え! 俺はホワイターを抑える」
「やっぱり無茶ですよ! ブラック・リリーは守り側だからホワイターにダメージは与えられないんですよ?」
「守り側でも攻撃を弾く程度は出来る!」
今やってるのが第一段階、ホワイターを森から出すという動作。
あいつのメイン武器は弓で障害物の多い森の中では圧倒的に振り。
避けようにも木々が邪魔をして回避がやりにくい。少なくとも俺はそう感じた。
だから平坦な場所に移動する。
「お前に剣を渡す。絶対に白姫に負けるなよ」
「はい!」
この作戦で一番大事なのが黒姫が白姫に殺されないことだ。
黒姫は白姫と同スペックと言うが違う。
明らかに動きが白姫の方が上だ。
だから俺は黒姫が白姫を討つ事を期待してない。俺は黒姫が生きていればそれでいい。
「もうそろそろ荒野です!」
「よし、剣を構えろ! 一気に迎え撃つぞ!」
そして作戦は第二段階に移行する。
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