12話 一筋の希望

 目を覚ますと何度も見た森の中。

 後ろにはホワイターがいる。


「おい、ホワイター。ここにいるんだろ?」

「おやおや、どうやらボクは君の罠にハマったみたいだ。もしかして君って強いの?」


 ホワイターが出てくる。

 近くにいるのはホワイターの姫。


「どうしてそう思った?」

「ボクは君の動きを予測して近くでゲームを開始した。しかし君はそれを読んでいた。強いと思うなという方が無理な話さ」


 なるほどな。

 ホワイターからしたらここで初対面か。

 悪いが俺は何度もお前を見てきた。


「ホワイター。俺はお前を買っている」

「ボクは君を見下してたけどね」

「これは宣戦布告だ。俺はお前に勝つ」

「そうかよ」

「じゃあな」


 俺は転移してその場を後にする。

 ライフルは便利だがループの中で役に立った試しがない。

 拾う必要すらない。


「おい、姫。お前のことは黒姫と呼ぶぞ」

「は、はい!」


 転移した先は街。

 そこで俺はいつも通り食べ物を集めて人形兵を作っていく。

 人形兵を作りながら同時に考える。

 どうやったらホワイターに勝てるか……


「リンゴ2個見つけました!」

「サンキュー」


 黒姫から赤いリンゴが投げられる。

 見事なまでの艶のある赤色だ。

 そういえば赤薔薇姫も赤が好きだって言ってたな……


 もしかして、赤っていうのはそういうことか! 赤薔薇姫はそれが言いたかったのか! たしかにそれならホワイターに勝てるじゃないか!


「黒姫……お前、白姫とタイマン出来るか?」

「一応スペックは同じなので可能かと……」

「勝てる! 勝てるぞ! この試合!」


 やっと勝ち筋が見えてきた。

 俺は人形兵にある指示を出して散らばらせていく。


 勝ちの条件はかなりシビアだが、やるしかないだろう。もしも今回ダメでもこの作戦を続ければいつか勝てるかもしれない。


「考えろ……勝つのに必要なのはなんだ?」


 この時間は今までのループで常にホワイターは白姫とエッチしていた。

 つまりステータス上げもアイテム集めもしていないのだ。

 そこがホワイター最大の隙。

 だから俺はそこを全力で突いていく。


「勝つのに必要なのは……時間だ」


 しかし、もう間に合わないな。

 今回は捨ててしまおう。

 でも絶対に次に繋ぐ。


「ちょっと街を探索するぞ。アイテムと武器が必要だ」

「はい!」


 それから街中でアイテムと武器を探す。

 武器はビームサーベルにありふれた剣。

 そしてアイテムは俺との戦いで赤薔薇姫が使用した瞬発力が100倍になる薬、5分だけ透明になる薬に守りのターンでも転移が出来る転移石など色々と使えそうなものが出てきた。

 俺はその位置を頭に叩き込んでいく。


「ブラック・リリー! あそこを見てください!」

「大量の食料だな」


 アイテムを探してる途中で大量の食料が落ちてる当たりスポットを見つけた。

 HPに換算すると約5000はくだらない。

 ここで約50体の人形兵が作れるな。

 それはかなり大きな進歩だ。


「しかし、攻めてこねぇな……」

「そうですね……」


『攻守交替の時間です。 ブラック・リリー様に攻撃権が移ります』


 そうして俺の二度目の攻撃ターンになる。

 もう少し街を探索するが特に目立ったアイテムは出てこなかった。

 そして五分、経ったのでホワイターの位置を確認して転移する。

 転移するとホワイターは俺が来るのを待ち侘びていたかのように話しかける。


「来たか。ブラック・リリー」

「あぁ」

「HP1035 瞬発力986 これが今のボクのステータスだよ」


 まずい……俺が最初に挑発したから俺を警戒してホワイターは白姫とエッチするのをやめてステ上げしていたのか!

 ホワイターは驚く俺を無視して小刀を構えて黒姫に突進する。

 あまりの速さに黒姫は対応出来ずにかすり傷を食らってしまう。


「まずい!」


 ホワイターの能力は毒。

 毒を完治する術を持たない俺にとって、これは負けに等しい。


「この反応を見るとブラック・リリーの瞬発力は高くても500程度か。そして瞬発力が400以上離れると――回避は赤薔薇姫クラスじゃねぇと無理なんだよ!!」


 俺の方にもホワイターが突っ込んでくる。

 ホワイターの動きは弾丸のように速い。

 だけど死神の鎌より遅い。

 俺は海老反りになって水平切りを回避。


「な!?」

「400程度で図に乗るなよ?」


 死神と戦っていて斬撃系統の技の避けは体が覚えてしまっている。

 たしかに黒姫を狙われたら反応出来ない。

 でも、俺を狙う分には……


「でも、悪いけど君の負けだよ。ブラック・リリー」


『勝者。ホワイター』


 その瞬間、アナウンスが流れる。

 黒姫に毒が回り切ったか……

 でも今回は捨てている。

 もうアイテムの位置も覚えた。

 最初に挑発してはいけないと学んだ。

 こいつを完膚なきまでに倒す策もある。

 俺は目を覚ましてホワイターの方を見る。


「ホワイター。ゲームはこれからだぜ?」

「悪いけどボクの勝ちだ。負け惜しみはやめろ」


 雫が俺の元に駆け寄ってくる。

 俺は雫を抱き寄せて雫の顔を見る。

 そこには可愛らしい顔がある。

 クリクリとした目で俺を見つめる雫。

 俺の姫様のために負けるわけにはいかない。


「俺はループしてるんだ。何度もお前に負けたし今さら一回くらいの敗北でなんとも思わねぇよ」

「ループなんてバカバカしい」

「吠え面をかきやがれ」


 俺は雫の唇を強引に奪う。

 雫も抵抗することなく唇を差し出す。

 ようやく希望が見えてきた……


「雫。次は負けねぇからな」

「……うん。司君なら勝つって信じてる」


 そうして俺の意識は飛ぶ。

 俺とホワイターとの最後の勝負が始まる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る