6話 4分46秒の激闘とイレギュラー
「俺の能力は残念ながら『強奪』だ。視認した武器やアイテムを奪う」
待て!!
それじゃあ、あの死神はどう説明する!?
いや、待て……
「お前なら察してるだろ。『きびだんご』というアイテムさ」
「……完全にやられたな」
きびだんご。
それはTEQに存在するアイテムで食べさせたモンスターを使役出来るようになる。
まさか死神を操っていたのは能力ではなくてアイテムだったとは……
でも、まだチャンスはある!
「残念だったな」
「店長。忘れてねぇか? まだ俺の攻撃ターンだぜ?」
店長は守り側だ。
どんなに強力な武器があろうが攻撃不可。
そして俺の残り攻撃時間は4分46秒。
つまり店長を4分46秒で倒せば十分に勝てる可能性はある。
「お前、4分46秒で決着がつけられるとか思ってるんじゃねぇか?」
「当たり前だろ」
「良いことを教えてやるよ。俺の現在のHPは大体――3000だ」
なるほどな。
俊敏性は最低限に済ませてHPにばっかり振っていたのか。
恐らく死神が殺られるのも想定内。
さて、問題はこのHPをどうやって削るのか。
俺は無言で剣を構える。
「炎剣ヴェルカン。攻撃力は500で六回殴れば俺の勝ちだな」
「この剣も奪ってやるよ」
相手の目が光る。
俺はすぐに飛んだ。
略奪は何度がプレイした事がある。
奪う条件はそこそこシビアで武器を瞬きせずにジッと3秒見なければならない。
戦闘中に奪うのはかなり至難の業だ。
「まずは一本」
「くっ!」
「続いて二本目」
空を飛び、そのまま落ちて右肩から左に切り裂いてすぐに水平切りで腹を切る。
だが、二本目は入らず死神の鎌で受け止められてしまう。
「死神の鎌は最強クラスの武器だ。武器破壊は不可能じゃねぇか?」
「そうだな」
俺はすぐにメニューを開いてハンドガンを出して店長の腹に六発連続で叩き込む。
ドトドドドドン!
それから店長の顔を回し蹴りして吹き飛ばして、すぐに追撃に入り剣撃を叩き込む。
店長は一つだけ見落としがある。
「な、何故だ! お前はなんでそんな速い!」
「死神を倒したことで俊敏性が大幅に上がってるからな。次で決めるぞ」
俺は剣先を店長に向ける。
残り時間は1分22秒。
これは俺がリアルで覚えた技。
ゲームシステムに頼らない俺のオリジナルスキルと言っても過言ではない。
「クララ・ストライク!!」
クララ・ストライク。
最初の一撃で切り裂き、相手が怯んだ一瞬逃さずに二回切り裂く三連撃攻撃。
それは見事に決まり、店長を切り裂いた。
そしてクララ・ストライクが決まると同時に俺の求めていたアナウンスが鳴り響く。
『勝者。ブラック・リリー』
長かった戦いはようやく終わりを告げる。
俺はきゃぴきゃぴカップへの出場を決めた。
「俺はこんなところで止まってられねぇんだよ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ブラック・リリー。良いゲームだった」
「こちらこそです。店長」
「お前の実力なら“きゃぴきゃぴカップ”の参加を認められる」
「ありがとうございます」
ようやく出られる。
そして再び赤薔薇姫と戦える……
「きゃぴきゃぴカップは全32名のノーシードトーナメントで最高で5試合行う。またきゃぴきゃぴカップはふざけた名前だがTEQ初の公式大会であり、日本代表決定戦の出場を賭けた予選でもある。そして32名全員が俺を倒して出場権を獲得している強者だ。心してかかれよ?」
「はい!」
俺は店長を倒すために何度もループした。
しかし今度の相手はループ無しで店長に勝つような化物揃いだ。
全員が格上の相手だ……
「店長。つかぬ事を聞いてもいいでしょうか?」
「なんだ?」
「他はどのくらい強いのでしょうか?」
「――化け物だ。赤薔薇姫は勿論だが俺を作業のように倒したプレイヤーが約8名もいる。ぶっちゃけお前じゃ下手したら手も足も出ないかもしれねぇな」
「そうですか……」
「でもな、ゲームっていうのは最後まで結果は分からねぇから面白い。絶対に諦めるんじゃねぇぞ」
「はい!」
そうして俺はゲーセンを後にした。
ゲーセンから出ると雫が待っていた。
「今回は勝てた?」
「あぁ」
「おめでとう。そして、頑張ったね」
「きゃぴきゃぴカップに出場が決まった。だから教えてくれ――雫は何者なのか。そしてきゃぴきゃぴカップと雫の関係について」
「うん。いいよ。でも、ここじゃ話しにくいから家に来てくれる?」
そうして俺は雫の部屋に招かれた。
雫の部屋は水色の壁紙にピンクの絨毯、それに天蓋付きの白いベッドと女の子らしさが現れる部屋となっている。
「TEQ。それを略さずに言うならTactical Extraordinary Queenなのは司君なら知ってるよね?」
「あぁ」
意味はTactical(戦術的な)Extraordinary(素晴らしい)Queen(お姫様)となるだろう。
それがなんだと言うのだろうか?
「TEQ。そのQueenが意味するのが、この私“雨宮雫”……いいえ、イレギュラー人工知能のシズクなんだよ」
「どういうことだ?」
「TEQは人工知能がたくさん運営することで成り立っている。そして、その人工知能のベースは全て私なんだよ。言うならば人類初の人工知能。そしてそんな私は姫と呼ばれて肉体が与えられた」
なんとなく雫の立ち位置は分かった。
信じられない話だが恐らく事実……
だが、まだ謎が多い。
雫はキスすることで俺を過去に飛ばしていて、それは明らかに化学じゃ説明不可。
間違いなくただの人工知能というには無理があるだろう。
「TEQはあなた達、人間にとっては遊びなのは間違いない――だけど私にとっては遊びじゃないの」
「そこを詳しく教えろ」
「姫というのは王がいて初めて成り立つものなの。そして王になるには強くなければならないんだよ」
まさか……この王が決めるのが“きゃぴきゃぴカップ”だというのか!?
もしも、そうだとしたら……
「想像の通りよ。きゃぴきゃぴカップ……いいえTEQは私の婚約者を決めるための手段なの」
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