3話 きゃぴきゃぴカップ
「決めたよ。雫」
「どうしたの?」
「俺、きゃぴきゃぴカップに出る」
俺は昨日、赤薔薇姫にこの上ないボロ負けをした。それから俺は悔しさのあまり赤薔薇姫についてひたすら調べた。
そしたら赤薔薇姫は『きゃぴきゃぴカップ』に出ることが判明した。
だから俺は“きゃぴきゃぴカップ”に参加して赤薔薇姫にリベンジを果たす。
「そっか……でも定員があと一人だってゲーセンの店長が言ってたよ。基本的にきゃぴきゃぴカップは参加券が必要で配ってるのがそのゲーセンなんだけど……」
「雫! 悪いが腹が痛くなったから学校は早退だ!」
「頑張ってね~。ちゃんとノートは代わりに取ってあげるから安心してね」
俺は仮病を使って学校を抜け出す。
そして、そのまま走ってゲーセンに向かう。
必死に何も考えずに走った。
吹き出す汗をそのままにしてひたすら……
あの赤薔薇姫と再戦するチャンス。
それを逃す訳にはいかねぇ!!
そんな思いでゲーセンに着くと店長がニヤニヤして待っていた。
「お前なら来ると思ってたぜ。ブラック・リリー。きゃぴきゃぴカップに参加希望か?」
「あぁ!!」
「きゃぴきゃぴカップは非常にレベルの高い大会だ。お前にきゃぴきゃぴカップに参加する資格があるか試させてもらうぞ」
「つまり?」
「俺に勝ったら参加券をやるよ」
「分かった……じゃあゲームしようぜ?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『先行『テンチョー』 後攻『ブラック・リリー』に決定しました。次に異能力の設定を……』
俺の今回の異能力は『羽根を生やせる』というもの。つまり空を飛べるだけの能力。
そして設定した特殊ルールは『互いに最初の攻撃ターン手出し出来ない』というものだ。
狙いとしてはその時間でパラメータを上げたり武器を整えたりすること。
今回は負けが許されねぇ……なるべく慎重に試合運びをしたい。
『では、続いてテンチョー様からの追加ルールを連絡します。テンチョー様が追加したルールは“1秒につき1mずつステージが小さくなる”です』
めんどくせぇルールだな……
つまり一時間経った時には3600m小さくなるから1000秒でステージの総面積は1割減ることとなり10000秒経ったらステージそのものが消滅する。
よってゲームのプレイ時間は長くても2時間と46分くらいということか……
ちなみにそういう場合のルールの場合は薄い赤色の膜が迫ってきてそこから出ると問答無用で敗北となる。
つまり相手を吹き飛ばしてKOを狙うという戦術も取れてしまうのだ……
『では最後にスタート地点を決めてください』
「俺が攻撃可能になった時に順当にいった場合の残り面積は4.6km×4.6kmだが、金色の魔物がやられて更に小さくなる可能性があるから……とりあえず中心にいた方が安全だな」
俺は迷わず真ん中をタップした。
それからすぐに音声が流れてゲームが始まった。俺が出た場所は墓場だった。
今回の配置だと真ん中に墓場か……
俺はとりあえず近くにある木箱を蹴って壊す。すると中からハンドガンが出てきた。
TEQでは木箱や壺を破壊すると武器やアイテムが出てくるのはお決まりだ。
しかし銃は外れだな……
弾数が限られてるからステータス稼ぎには向かない。
そしてこのハンドガンの弾数は六発か……
そう思った矢先だった。
「ウワォォォァァァァァァ」
「オークロードだと!?」
現れたのは緑色の魔物のオークロード。
こいつはそこそこ強くて初期パラメータだと倒すのに苦戦を強いられるのは間違いない。
初心者がオークロードに挑んでゲームオーバーとなる事例が山のようにある。
事実として俺も最初のうちはそうだった。
「たしかオークロードのHPは300で、このハンドガン一発で約40~60削れる……運が良ければいけるか?」
それに何よりオークロードは剣を所持していて、剣が欲しい身としては倒すメリットは大きすぎる。
俺は能力を使って空を飛び、オークロードに連続的に銃弾を叩き込む。
ドドドドドドン!
「……やったか!?」
「ウォォォォォォ!!」
クソっ! 乱数の引きが悪くて削れきれなかったか! でも、まだだぁ!!
俺はそのまま急降下して回し蹴りをオークロードの顔に入れた。
もう残りのHPも僅かだ。
そうなれば物理攻撃で削るのもアリだ。
しかしTEQでは素手の攻撃で与えられるダメージは2~6程度しかない。
「ウォォォォォ!! オォォォォ!」
「まだ……ぐはっ!」
しかしオークロードは削り切れずそこに、オークロードがカウンターを決めてきてドンッと俺の体が吹き飛ばされる。
俺は吹き飛ばされてすぐにステータスを確認する。すると残りHPは僅か6だった。
無強化でオークロードに挑めば乱数によっては一発KOだってありえる。
今回は運が良かったとしか言い様がない。
だが、次はない……
「でも、やってやるよ」
ダークリリーに逃げの二文字はなかった。
もしもここで逃げるようじゃ赤薔薇姫に勝つなんて夢のまた夢だ。
このくらいの試練を突破してやる。
そんな覚悟を胸に俺は空を飛ぶ。
幸いにもこのTEQには落下ダメージというものは存在しない。
つまりどんな高空から落ちても問題ない。
だったら上空の死角から一気に畳み掛ける!
俺は上まで飛んで加速しながらオークロードに突っ込む。
しかしオークロードはそれを予期したのか大剣を振り回してきた。
俺はそれをギリギリで体を捻り回避。
しかし急な方向転換に反応出来ずに地面に体が叩きつけられた。
だがオークロードも大振りな攻撃をして怯んでいる。俺はすぐさま走り、オークロードの顔面に真っ直ぐのストレートパンチを叩き込んだ。その瞬間、HPが0になったのかオークロードは青い粒子となって消えた。
「はぁ……はぁ……ステータスオープン」
ブラック・リリー
HP86/180 瞬発力100
赤色の魔物0 転移30/30
一気に80も上がったか……
さすがオークロードと言ったところだな。
しかしダメージをそこそこ受けた。
TEQではHPは自然回復しない。
そのためマップを散策して食べ物を見つけて食べて回復する必要がある。
そう思った矢先だった。
「ワレ、サイキョウナリ」
「おいおいマジかよ……」
背後から死神が現れたのだ。
死神はTEQ内にいる魔物だがHP1万オーバー、攻撃が大振りの鎌で回避がめちゃくちゃ難しい事で有名だ。また攻撃の威力も高くて1800くらいあり最強クラスのモンスターと謳われる。
もしも見つけたら逃げろと言われてるくらいの化け物だ……
「よぉブラック・リリー」
「テンチョー!?」
しまった!!
既に五分経っていて現在地が割れたのか!
でも俺の追加ルールで攻撃は……
「攻撃は不可能でもMPKはセーフだよな?」
その瞬間、俺は全て覚った。
テンチョーが俺の元まで死神を誘導した。
気付いた時には冷たいアナウンス。
『敗者。ブラック・リリー』
俺は呆気なく負けていたのた。
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