第38話 処理
相賀はグローブを手にはめ、馬車の裏手へと回った。
そこでは、爆発物をどうしようかと騒いでいる騎士たちがいる。
相賀はそこに割って入った。
「すみません!爆発物はどれですか!?」
「こ、これだが、どうするつもりだ?」
「要するに、爆発に巻き込まれなければいいんですよね?」
そこにジェシカもやってくる。
「マサヤ!それをどうするつもりなの!?」
「遠くにぶん投げます!」
「しかし、爆発の規模が分からない以上、どうしようもないのじゃない」
「大丈夫です。僕の力があれば問題はないはずです」
そういって、爆発物を受け取る。
そのまま、グローブに力を込めた。
魔石が光り輝き、相賀の身体を強化させる。
そして、そのまま遠くにぶん投げた。
投げられた爆発物は、目測で100m以上も飛んでいく。
そして着弾の衝撃からか、爆発物が爆発する音が聞こえる。
どうやら処理は無事に済んだようだ。
「ね?問題なかったでしょう?」
「え、えぇ。そうね……」
「他の麻袋も開けてください!同じように爆発物があるかもしれません!」
相賀は騎士たちに言う。
ハッとした騎士たちは、急いで麻袋を荷台から降ろし、全ての検査をする。
すると、ほとんどの麻袋に、同じような爆発物があることが判明した。
「どれも残り2分もないぞ!」
騎士の一人が叫ぶ。
相賀は受け取った爆発物を、片っ端から遠くへ投擲する。
身体強化の魔石を使いつつも、全力で投げ飛ばす。
どの爆発物も、着弾と同時に爆破する。
そして最後の爆発物を投げた。
その爆発物は残り7秒というギリギリのところで、相賀の手を離れる。
そして空中で爆破した。
「処理完了……」
相賀はその場に膝まづく。
それは、身体強化による体への酷使を意味しているからだ。
相賀のもとに、ジェシカがやってくる。
「すごいわね。爆発物をあんな風に扱う人間もそうそういないわ」
「まぁ、緊急事態だったもので……」
「そうね」
そういって、ジェシカは相賀が立つのを手伝う。
相賀の体は、魔石の弊害を受けて、筋肉痛のような感覚を覚える。
とりあえず相賀は、筋肉をほぐす目的で背伸びをした。
そんな中、ジェシカが思い出したように言う。
「それと、あなたともう一人の女の子、後でこっちに顔を出してちょうだい」
「何かありました?」
「あったも何も、爆発物なんていう物品所持してたんだから、事情聴取に決まっているでしょ」
「あー……、確かに」
「分かったら、あそこの掘っ立て小屋のような建物に来てちょうだい。あなたたちのことだから逃げるような真似はしないと思うけど」
そういってジェシカは、その掘っ立て小屋のような建物の方へと歩いていく。
そこに、ルナがやってくる。
「マサヤさん、大丈夫でしたか?」
「はい、何とか」
「ジェシカさんと何か話していたようですけど、何を話していたんです?」
「あぁ。事情聴取するから、あの建物に行ってくれって話ですよ」
「へー。って私たちまた尋問されるんですかぁ!」
「まぁ、仕方ないですよ。僕たちの馬車から爆発物なんて出てきちゃったんですし」
「むぅ。仕方ないですね……」
そういって、相賀たちは掘っ立て小屋のような建物へと向かう。
その建物は、まるで建築したてのような感じである。おそらく、この検問のためだけに建築したのだろう。
相賀たちはその建物へと入る。
中では騎士や王国の職員たちがざわざわとしていた。
「お二人さん、こっちよ」
そういってジェシカが手を振る。
二人は素直にそっちの方へと向かう。
「申し訳ないけど、二人には、これから尋問をさせてもらうから。この部屋に入って、待っててくれる?」
「分かりました」
そこは、ちょうど取調室のような小さな部屋である。ここに5人も入れば、いっぱいになってしまうようなくらいである。
部屋に入って数分して、ジェシカともう一人が入ってきた。
「お待たせ。それじゃあ事情聴取をしていくわよ」
そういって、相賀たちに対して事情聴取が行われる。
「なるほど。あれは依頼を受けて運んできたものなのね」
「はい。依頼書はここにあります」
「どれどれ。……ふんふん、なるほどね。この男にあの袋を運ぶように言われたんだ?」
「はい」
「中身は確認した?」
「いえ」
「そうよね。普通客の荷物の中身なんて見ないわよね」
このように、事情聴取は進んでいく。
「はい。尋問は以上よ。お疲れ様」
「それで、僕たちは今後どうなるんですか?」
「そうね……。しばらくは拘束かな?レイレスの街に連絡して、依頼書の男に会ってみないと分からないわ」
「そう、ですよね」
「大丈夫よ。何かあっても、あなたたちは問題ないわ」
そういって、ジェシカは取調室を出る。
しばらくはここに拘束されることだろう。
それから数時間。
取調室にいた相賀たちのもとに、ジェシカがやってくる。
「今さっき、レイレスから連絡があってね、依頼主の男が捕まったらしいわ」
「本当ですか!」
「えぇ。どうやらその男は、未到達地へ行くことに反対している宗教団体に所属している人間らしくて、今回の騎士団と冒険者による未到達地への調査を止めようとして混乱を誘いたかったらしいわ」
「なんともはた迷惑な……」
「でもあなたたちの無実は証明されたのだから、喜ばしいことよ」
「それもそうですね」
そういって、相賀たちは釈放された。
「今回の依頼料とかに関しては、騎士団のほうから連絡があると思うから、その時はよろしくね」
「分かりました」
「それじゃあね。変な依頼を受けないように気を付けるのよ」
「あははは……」
「それじゃあ、また調査で会いましょう」
「えぇ」
そういって、相賀たちは馬車に乗って、レイレスの街へと戻っていくのだった。
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