第37話 検問

 夜間の間、山賊の見張りをしていたため、若干寝不足気味である二人だった。


「やっぱり夜のうちに解放しておいたほうがよかったんじゃないですか?」

「また襲いかかれたら面倒ですよ」

「それでも休めないのなら釈放したほうがいいんでは?」


 そんな話をしていると、山賊のほうから話を振ってくる。


「もう俺らは襲わないって言ってるじゃないかよぉ」

「信用なりませんよ」

「マサヤさんは休憩出来なかったかもしれないけど、私は休憩出来たので問題はありませんよ」

「そうかもしれませんけど」


 そんなことを言いつつも、二人は出発の準備をする。

 そしてそのまま、山賊を置いて出発した。

 二人は自走式馬車に乗って、ローリャの村に向かっていく。

 道中、小さな川を越えたり、峠を越えたりと自然の中をゆっくりと通過していく。


「ルナさん」

「なんでしょう?」

「もうちょっとスピードって出ないんですか?」

「出ませんねー。特に荷物を載せているんで、安全第一で行かないといけませんから」

「へーい……」

「それにマサヤさん、昨日は一晩中起きてたんですから、今のうちに休んでいたほうがいいですよ」


 ルナはそんなことを言いつつ、運転を続ける。


(でも運転が怖いからあんまり寝れないんだよなぁ)


 そんなことを相賀は考える。

 しかし、その数十分後にはぐっすりと眠る相賀であった。

 その日は約25kmほど移動して休憩する。

 さらに翌日、再び移動を開始した。


「そろそろローリャの村に着くころですね」

「確かローリャの村に着いたら、村の商店に行くんでしたっけ」

「そうですね」


 そんな話をしていると、目の前に何か交通整理のようなものをやっているのが目に入る。


「あれ何でしょう?」

「さぁ?何か検問でもしているんでしょうか?」


 相賀たちは、疑心暗鬼のまま、その検問のような場所へと向かう。

 近づいてみると、どうやら相賀の言っていることは正しかったようだ。

 そこでは、王立騎士団による検問が行われていた。


「そこ、検問を行ってないものは通過してはいけない。今すぐ荷物を検査させろ」

「申し訳ないが、この荷物ではここを通過することはできない。この荷物を置いていくか帰るか選んでくれ」

「検査を受けてない物はこっちに並んでくれ!そっちは村から出るほうの列だ!」


 そこまで人はいないものの、なんともにぎやかな状態である。

 その中で、見たことある人間の姿を確認する。


「あれってジェシカさんでは?」

「本当だ。おーい、ジェシカさーん!」


 ルナが大声でジェシカのことを呼ぶ。

 その声に気がついたのか、こちらを振り向く。

 そしてこちらに寄ってきた。


「どうしたの?こんなところで」

「実は依頼でローリャの村に荷物を届けに行くところなんですよ」

「そう。でも今はローリャの村に行くには、検問を通らないといけないからね。あなたたちも例外ではないのよ」

「分かってまーす」

「ちなみに、馬車はそっちの列に並んでね」


 そういって、ジェシカは持ち場に戻る。

 相賀たちはジェシカの言う通りに、検問の列に並ぶ。

 1時間もすれば、相賀たちの順番が回ってくる。


「それでは検問を行う。二人とも、何か身分証のものを持っているか?」

「はい、冒険者カード持ってます」

「見せてくれ」

「ちょっと待ってくださいね……。はい」


 検問を担当する騎士に、二人は冒険者カードを提示する。

 騎士はそれを受け取り、その情報をじっくりと見る。


「よし、問題はない。次は荷物を見させてもらう」


 そういって、騎士は待機していた騎士たちに指示を出す。

 すると、騎士たちは何か棒状のものを持って、荷物を漁っているようだった。


「あれは?」

「あれは魔道具探知機。不審な魔道具を発見したら音がなるような検知装置を備えているんです」

「へぇ」

「まぁ、私たちには関係ないことでしょうけど」


 ルナがそんなことを言っていると、けたたましい警報音が鳴り響く。

 振り返ってみると、荷物として受け取った麻袋に反応していた。


「そんな、嘘……」


 ルナはそれが現実と受け入れられないような顔をする。

 騎士たちの動きが激しくなる。


「君たち!あれの中身を見てもいいかね!?」

「え、あ、はい」


 突然のことで、ルナははっきり返事をする。

 騎士の一人が、麻袋のうち1袋を降ろし、中身を確認する。

 中身は白い粉で満ちていた。

 とにかく中身を取り出す。

 すると、中から点灯する機械のようなものの一部が出てきた。

 騎士が慎重に、機械のようなものの確認を行う。

 そして騎士がいろいろ確認したあと、驚いたような声でいう。


「まずい、爆発物だ!」


 その声に、周囲にいた人々は悲鳴に似た声をあげる。


「爆発物だって!?」

「こんなとこで爆発されたらひとたまりもないぞ!」

「逃げろぉ!」


 そういって、周辺にいた人々は一目散に走って逃げていく。

 一方の当事者である、相賀たちは、動けずにその場で固まっていた。

 その間にも、騎士たちによる確認作業は続けられている。


「あとどれくらいで爆発する!?」

「ちょっと待ってくれ……。あと4分!」

「まずいぞ……、これ全部そうだとしたらどうにもならないぞ……!」


 騎士たちの焦りが垣間見える。


「おい、君たちも早く逃げろ!でないと爆発に巻き込まれるぞ!」


 逃げろ。その言葉に相賀はハッとする。

 しかし、逃げるにしても、この爆発物がどこまで影響を与えるか分からない。

 それに、この馬車を置いて逃げるなんて、相賀には出来なかった。


(どうする……?考えろ……)


 そうしている間にも刻一刻と時間は過ぎ去っていく。

 ルナは馬車から降り、すでに逃げる準備をしていた。


「マサヤさん!早く逃げましょう!」


 その時、相賀はある考えが頭の中をよぎった。


「全てを守るには、これしかない!」


 相賀は実行に移そうとする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る