第33話 依頼は達成された?

 相賀たちは依頼達成の報告をしに、依頼主のもとへ向かう。

 依頼主の男性は、相賀たちの報告をぶっきらぼうに聞き流していた。


「……というわけで、オークのコロニーを壊滅させることに成功しました」

「……そうかい、そいつはよかったな」

「なので、依頼達成したかを確認しに、一緒に来ていただけたらと思うのですが」

「あぁ、なんでそんなことしないといけないんだ?」

「それが規則というものなので」

「ちっ、しゃーねーな」


 そういって依頼主の男性は手を差し出す。

 相賀は疑問の表情を思い浮かべる。


「何固まってるんだよ。依頼書を出せっつってんだよ」

「え、でも確認しに行かないと……」

「別に確認しに行かなくても、あんたらだったらちゃんとやってるんだろ?ならいいじゃねぇか」


 そういって、男性は相賀に依頼書を出すように言う。

 相賀は仕方なく、依頼書を差し出した。


「最初からそうしておけばいいんだよ」


 そういって、男性は依頼書に殴り書きするように、サインを書く。


「ほれ、これでいいんだろ」

「えぇ……。ですがせめて見に行かないと」

「もう用事は済んだんだ。さっさと帰れ」


 そういって、相賀たちは追い出されるように、家を出される。


「ちょっとあの態度は不味くないですか?」

「確かに不味いですね。これが王立騎士団に見つかったら身柄の拘束まで考えられますよ」

「どうしましょう?」

「ここは、マサヤさんに一つ頼み事をしてもらいましょう」

「頼み事、ですか?」

「はい。オークの頭を回収してきてほしいんです」

「それがなんの役に立つんですか?」

「私たちがオークを倒した証拠を残しておくためですよ。だから、マサヤさんにはオークの頭なりを回収して、そこに埋めてきてほしいんです」

「なるほど、もし王立騎士団に捕まったとしても、証拠を残しておけると」

「そういうことです」

「ならすぐに向かいましょう」


 早速相賀は、先ほどオークがいた山の谷間に向かう。

 そして、そこで状態の良いオークの頭を回収してくる。


「それで、これを埋めると」


 相賀は、剣をスコップ代わりに使って、地面を掘る。

 ある程度まで掘ると、そこにオークの頭を埋めた。

 そして掘った土を戻していく。

 その際、掘った場所が分かるように、すこし土を盛り上げておいた。

 こうして、少し分かりやすくしたところで、相賀はルナのもとに戻る。


「大丈夫でしたか?」

「えぇ、問題なく埋められました」

「では帰りましょうか」

「はい」


 そうやって、相賀たちは1日ほど使ってレイレスへと帰還した。

 冒険者ギルドの前に止めると、ルナは杖を一振りする。

 すると、自走式馬車は形を変え、手のひらに収まるまで小さくなった。


「ちゃんと見ているのに、目を疑うような光景ですね」

「それでもちゃんと動いているので、問題はないですよ」


 そういって二人は冒険者ギルドへと入っていく。

 そのまま受付へと向かっていった。


「すみません。これ、依頼完了しました」

「はい、確認します。……はい、問題ありませんね。お疲れ様でした」


 そういって、依頼達成の賃金を受付は持ってくる。

 二人はそれを山分けした。


「いやー、パーティ組んで初めての依頼でしたけど、問題はないようでしたね」

「そうですね」

「今日はもう休憩にして、新しい依頼は明日受けることにしましょう」


 そういって、ルナは冒険者ギルドに併設されている大衆食堂へと向かった。


「今日はパーッとやっちゃいましょう!」

「あんまり羽目を外しすぎるのもどうかと思いますけどね」

「いいじゃないですか、今日くらい」


 そういって、ルナは席につく。もうすでに何かを頼もうとウズウズしている感じだ。

 仕方なく、相賀も席につく。


「すみませーん、アロカドのオマール焼きとミールスパゲティ、それにエールくださーい」

「じゃあ僕はドロアルの直火焼きとぶどう酒ください」


 しばらくしてから、相賀たちの前には料理が運ばれてくる。


「いっただっきまーす」


 元気よくルナが料理に手を伸ばす。

 一方で、相賀も目の前の料理にありつく。

 ドロアルの直火焼きは、牛に似た動物の肉を直火で焼いたステーキのようなものだ。

 質はそこそこだが、量がかなりあるため、冒険者にとっては人気のメニューである。

 そんな料理をほおばっていると、ルナから声がかかる。


「マサヤさん、本当に記憶がないんですよね?」

「はい、おそらく」

「それだったら、記憶を呼び覚ますというのはどうでしょう?」

「記憶を呼び覚ます?」

「はい。私の知り合いに、そういった研究をしている子がいるんですよ」

「へぇ……」


 この瞬間、相賀はマズいと思った。

 それは、相賀がこの世界とは異なる場所から来ていることを知られることを意味している。

 つまり、それだけでも脅威になりえるというわけだ。


「それは今度にしません?」

「まぁ、その子もいつ研究室を開けるか分からないので、大丈夫ですよ」


 相賀はホッとする。

 まだ秘密を知られるわけにはいかないからだ。

 そんな感じで夜になっていく。

 そこには、エールの飲みすぎで酔っぱらっているルナの姿があった。


「ルナさん、大丈夫ですか?」

「うぅん、大丈夫れすぅ」


 半ば眠りながら返事をするルナ。

 これはダメそうだと相賀は悟る。


「とりあえず、移動させないとな」


 そういって、ルナの肩を担いでいく。

 周りからは変な目で見られたが、そのままギルドに併設されている宿泊所を利用する。

 部屋に入ると、そこは簡素なベッドとソファが置いてあった。

 とにかく、ルナをベッドに寝かせ、相賀はそのままソファに横になる。

 そして、そのまま深い眠りへと落ちていくのだった。

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