第32話 霊体化
翌朝。
相賀はよく眠れない様子だった。
それは、同じ屋根の下で同い年くらいの女性と寝たことがなかったからだ。
(こういう
そんなことを考えつつも、相賀は起き上がる。
ちょうどタイミングよく、ルナも起きた。
「おはようございますぅ」
「おはようございます、ルナさん」
「さて、今日は張り切って行きますか」
そういって朝食を取り、目的の場所へと向かう。
その道中。
「ルナさん、具体的に霊体化ってどのようなことをするんですか?」
「そうですね……。まず、マサヤさんには横になってもらいます」
「いきなりですか?」
「そうしないと霊体化は使えないんですよ」
「はぁ、それで?」
「その後、私が霊体化の魔法をマサヤさんにかけます。この時、マサヤさんの霊体を増幅指せる感じなんです」
「ふむ」
「増幅させると、マサヤさんの今身に着けているものとかが一緒に霊体となって物理的にも大きくなるという寸法です」
「なるほど」
「まぁ霊体の状態を体験することも可能ではあるんですが」
「そうなんですか?なら、一度本番前に霊体になってみたいんですが」
「いいですよ。では今回は腕を霊体化させてみましょう」
そういって準備が行われる。
とはいっても、手頃な岩に腕を乗せるだけであるが。
「では行きますよ」
そういって、ルナは杖を構えて、何かの呪文を唱える。
そして杖を相賀の腕の方に伸ばす。
すると、相賀の腕に違和感が生じる。
「おぉ……。なんか変な感覚がします」
「そのまま腕を動かしてみてください」
そういって相賀が腕を動かしてみると、腕が白い
「おぉ。これが霊体」
「そうです。これで試しに岩を叩いてみてください」
そう言われて、相賀は岩をノックするように叩く。
すると、その岩にヒビが入った。
「うわっ」
「このように、霊体化すると肉体の時以上の力が発揮されるんです」
「へぇ、これはすごいですね」
「では戻します」
そういって、ルナは杖を一振りする。
すると、相賀の腕は外部から力を受けたように、まっすぐ自分の腕に戻っていく。
「おぉ」
「これで体験は終了ですね」
「腕だけであんなになるのに、どうして全身やる必要があるんですか?」
相賀は最もな疑問を投げかける。
「それはですね、あんまり局所での霊体化をしているとその部分が壊死してしまうからなんですね」
「えっ」
「あぁでも、今みたいに短時間での使用なら問題はないんです」
「はぁ、そうなんですか……」
全身やるにはそれなりの理由があるようだ。
「本番では全身やる上に、大きさも自由自在ですね」
「なるほど。つまり、僕が大きくなった状態で殴れば、オークの群れにそれなりのダメージを与えることができるというわけですね」
「そうなります」
今回の作戦を理解したところで、相賀たちはオークのコロニーがいる谷間へと到着する。
早速相賀は身を隠せる場所に横になった。
「それでは、マサヤさんの体全体に霊体化の魔法をかけます」
「はい」
「今回の魔法で行動できる時間は約3.34分です」
「えっ」
「それに、マサヤさんの体にそれなりの負担がかかるので気を付けてください」
「えっ」
「それじゃあ行きますよ」
「えっ、聞いてないんですがそれは」
「えいっ」
相賀の言葉に耳を傾けず、ルナは霊体化の魔法をかける。
一瞬、相賀の意識が飛ぶ。
そして次の瞬間には、相賀の視線は高い所にあった。
相賀は現状を把握するために、横を見てみると、すぐそばにオークのコロニーがあるではないか。
相賀は考える暇もなく、横になったままオークのコロニー目掛けて拳を振り下ろす。
すると、相賀の拳はオークのコロニーを半壊させた。
相賀はそのまま立ち上がる。
その時になって、ようやく周りの状況を把握することができた。
相賀の身長は約15m程度になっており、オークの群れは足元に複数体いた。
「これなら」
そういって、相賀はその場で足踏みをする。
すると、そこに巻き込まれるように、オークが踏みつぶされていく。
そして不思議なことに、相賀が足踏みをしてもまったく地面が揺れていないのである。
あるオークたちは、勇敢にも相賀のことを倒すべく反攻に出ているが、残念ながら相賀には攻撃は通用していない。
そして、そこを狙うように、相賀はオークを拳で潰していく。
それはまるで、アリで遊ぶ子供のようであった。
そして、蜘蛛の子を散らしたように逃げるオークたちを追いかけまわしているうちに、相賀の意識はフラッとくる。
そしてそのまま暗闇に飲まれてしまう。
次の瞬間には、相賀は自分の体に戻っていた。
傍らには膝をついているルナの様子を確認できる。
「ルナさん!」
相賀は立ち上がり、ルナのもとに駆け寄ろうとする。
しかし、上手く立ち上がることができずに、よろめいてしまった。
それでも、何とか立ち上がり、ルナのそばに寄る。
「ルナさん、大丈夫ですか?」
「えっへへ、すこし魔法を行使しすぎちゃいました」
「大丈夫なんですか?」
「えぇ、大丈夫です」
「それは良かった……」
相賀はひとまず安堵する。
そしてオークの様子を確認するため、谷間を見た。
どうやらオークの死体のみがあるだけで、生きているオークは散っていったようだ。
「どうにか依頼達成しましたね」
「えぇ、お互い満身創痍ですが」
こうして、無事に依頼を達成することができたのだった。
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