第24話 名誉挽回

 とにかく相賀の当面の目標は、汚名を返上しないといけないところからである。

 そのためには、とにかく依頼を受け続けるマシーンにならないといけないだろう。


「汚名返上のために、手当たり次第依頼を受けるしかない」


 そんなことを考えていると、受付の奥から職員が出てくる。


「マサヤ様、アイガマサヤ様はいらっしゃいますか?」


 職員が相賀を呼んでいる。

 相賀は、そそくさと移動しながら、職員のそばによる。


「はい、自分です」

「あ、マサヤ様。少しお話があります。こちらへどうぞ」


 そういって、職員は受付の裏に入るように促す。

 相賀は怪訝そうに受付の裏に入る。

 そして、そのまま面会室のような場所に通された。


「突然呼び出してすみません。少しお話しておきたいことがありまして」

「はぁ」

「こちらで噂程度なのですが、マサヤ様に関して良くない情報を手に入れまして……」

「まさか……、強姦のことですか?」

「そうです」

「僕は断じてやってません!」


 相賀は思わず叫んでしまう。

 その声に、裏方業務をしていた職員全員が振り向く。


「あ、すいません……」

「とにかく事情は聞きましょう。一体何があったんですか?」

「それが……」


 相賀はこれまでにあったことをすべて話す。


「……という感じです」

「ふむ。もしこの話が本当だったとしたら、ローラン様たちに非があることになりますね」

「そうでしょう。なら彼らにも話を聞いてください」

「話は聞きました。しかし彼らはマサヤ様のことはあくまでも内密にということでしたので……」

「どうして……」

「それに、今回の場合のように双方で意見が食い違っていた場合、実績を重ねていて、より信用のあるローラン様たちの方が優先的に意見を聞くことになるのです」

「そんな……」

「今回はマサヤ様には厳重注意を促しておきます」

「なんで僕だけこういう扱いなんですか」

「我々は真実を追及することは仕事ではないので……」


 こういって、相賀はうなだれる。

 これ以上は何を言っても聞き入れてくれない様子だったからだ。


「それと、ローラン様から申請があり、マサヤ様のパーティからの脱退を受理しました」

「まぁ、それはいいです」

「お話は以上になります。何か質問などはございますか?」

「今回のことで、今後のことに何か影響が出たりするんですか?」

「今の所、問題はございません。もともとローラン様からは内密にとの話でしたので」

「そうですか」

「それでは、今回のご説明は以上とさせていただきます」


 そういって、職員は退席するように促す。

 相賀はそれに従い、受付へと戻っていった。


「それでは、今後のご活躍を期待しています」


 そうって、職員は相賀のことを送り出した。

 相賀はそのまま、依頼ボードへと向かう。

 早速依頼を受けようとしたのだ。

 しかし、依頼ボードには人だかりが出来ており、どんな依頼が出ているのか見えない。

 だが、誰かが相賀のことに気が付いたのか、スッとその場を譲る。

 その波は次第に広がっていき、やがて相賀の前には道が出来ていた。

 相賀は一瞬ためらいを見せるが、意を決してその道を進む。

 相賀に降り注ぐ視線は痛い程であったが、相賀はそれらすべてを無視して依頼ボードを見る。

 そして依頼の一覧を眺める。


(何か今の自分にできるものはないか……?)


 そう探していると、あるものが目に止まる。

 とある洞窟に住み着くゴブリンの群れを退治してほしいという依頼だ。

 ランク設定はそこそこ低い。

 これなら今の相賀にも倒せそうだ。

 相賀はその依頼書を取って、受付に向かう。

 受付に向かう途中でも、人々が割け、道が出来ていた。

 相賀は、何とか恥ずかしさや視線、重圧に押されながら、受付へ行く。


「これ、お願いします」

「ゴブリンの討伐ですね。受け付けました」


 相賀はそそくさと、その場を離れるように冒険者ギルドを後にした。


「とりあえず、依頼主のところまで行かないとな」


 そのために、まずは準備を整える。

 野営のための道具や、食料の買い込み、その他諸々の準備をした。

 こうして準備を整えたところで、相賀は街を出発する。

 目的地は、ここから徒歩で2日ほど歩いた所にある小さな村だ。

 地図を持って、相賀はその村へと向かう。

 比較的温暖な気候であるものの、この日差しでは汗が吹き出る。

 途中適度に水分補給や休憩、日が暮れたら野営して、目的の村に向かう。

 そして2日後、目的の村に到着する。

 早速依頼主のもとに向かう。


「あんたが冒険者か?」

「はい」

「へぇ、なんだか珍しい服装してるんだな」

「あはは……」

「まぁいい。とにかく依頼の話をしようか」

「お願いします」

「今回の依頼はゴブリンの討伐だ。この近くにある洞窟にゴブリンの群れが住み着きよってな。これじゃあ作物どころか村の連中にも被害が出ちまう。その前にどうにかして冒険者のあんたに、ゴブリンの群れを退治してほしいというわけさ」

「わかりました。まずは様子を確認してくるところから始めます」

「頼む。荷物はこの家に置いていってもいい」

「では」


 相賀は余計な荷物を置いて、目的の洞窟に向かう。

 村人の青年が案内をしてくれた。

 その場所に向かうと、そこには複数体のゴブリンが門番のようにいる。


「さて、場所も確認した所だし、一度村に戻ろう」


 相賀は一度村に戻って、今後の作戦を練ることにした。

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