第25話 洞窟に向かう

 村に戻った相賀は、洞窟に関する情報を収集する。


「ゴブリンのいる洞窟?最近行ってないから分からんな」

「あの洞窟なら、内部はダンジョンみたいだったよ」

「昔はあそこで酒の貯蔵をする位には部屋みたいに分かれておったな」

「学者さんが言うには、あそこは洞窟としては人為的な出来をしていたみたいだぞ」

「途中何本か分かれているが、基本的には一本道だ」

「大きさは幅が38.74mくらい、奥行きが84.89mくらいあるな」


 そのほかいくつかの証言を得て、相賀は洞窟に関する情報を整理する。


「どうやら洞窟は奥に長い形で、中は部屋のようなものがいくつか存在しているのか」


 その情報を整理した所で、相賀は重要なことに気が付く。


「ゴブリンのこと、なんも知らないや……」


 相賀の持っている知識はそんなに多くなく、さらに相賀の知識とこの世界のゴブリンとでは異なる点があるかもしれない。

 早速依頼主のもとに聞きに行く。


「ゴブリンのことだって?」

「はい」

「あんた、そのなりでゴブリンのこと何にも知らないのか?」

「実は、記憶を失っているようで、思い出せることが限られているんです」

「……そうかい、なら教えてやろう」


 そういって、依頼主はゴブリンの特徴について話し始める。


「まずな、ゴブリンというのは夜行性なんだ。あいつらは夜に活動するから、薄暗い洞窟でも生活していくことができる」

「ふむふむ」

「それにな、あいつらはメスの女王ゴブリンを中心に社会を形成しているんだ。その女王を取り逃がしてしまうと、また別の所で群れを作って繁殖し始める。だからゴブリンの群れを壊滅させるには、女王ゴブリンを殺したほうが効率がいい。そうすれば、ゴブリンの群れは統率を失ってバラバラになるからな」

「なるほど」

「その女王ゴブリンはかなり巨大だ。もし相手にする場合は気をつけろよ」

「はい」

「あいつらは人間の子供並みに知性を持っている。だから道具を作ったり火を起こしたりすることができる。確か、兵隊ゴブリンのようなヤツもいるから相手する場合には要注意だな」

「えぇ」

「たまに人間の女をさらって孕み袋にすることもある。まぁ、あんたは男だから問題はないだろうが、くれぐれも注意することだな」

「そうなんですか」

「こんなところか?後は普通の動物と似てるから大丈夫だとは思うがな」

「分かりました。ありがとうございます」


 そういって相賀は戻る。


「なんだかアリみたいなゴブリンだなぁ」


 実際女王を中心とした社会を形成しているのは、アリやハチに見られる特徴である。


「アリの特徴を持った哺乳類ってどうなの……?」


 変な所に疑問を持つ相賀であった。

 翌日。

 再び洞窟に向かった相賀は、慎重に歩みを進める。

 それはゴブリンの洞窟に強襲するためだ。

 まずは、死角から洞窟の門番をしているゴブリンに襲いかかろうと考えているのだ。


(しかし、複数体いるのが面倒なポイントだな……)


 こういう時、弓のような飛び道具を持っていたなら、簡単にゴブリンを葬り去ることができるだろう。

 しかし、相賀はそういう訓練をしているわけではないし、そもそも弓を持っていない。

 だが、無い袖は振れない。現状持っている手札で行うしかないのだ。


「門番ですか。厄介ですねぇ」

「どうにかして排除出来ればいいんですが」


 その会話に相賀はハッとする。

 そして振り返った。

 そこには、冒険者のような恰好をした女の子がいた。


「……あなた誰です?」


 相賀は冷静に相手のことを聞く。


「私ですか?私はルナ。この国を渡り歩いている研究者です」

「そんな研究者がなんでこんな所に?」

「実は私の通っている大学の図書館で調べた所、ここ周辺の土地は珍しい鉱物があることが分かったんです。しかもちょうどいい所に洞窟があるじゃないですか。これは調査しないわけにはいきません」

「それは別にいいんですけど、もし僕がいなかったらどうするつもりだったんですか?」

「その時は、洞窟ごと大爆破して、無理やりでも調査していましたよ」

「……それはまぁ、無茶をすることで……」


 そんな会話をしていると、門番をしていたゴブリンの一匹がこちらにやってくる。

 どうやら、相賀達が騒いでいたのを聞きつけたようだ。


「どうするんですか、なんかこっちにきましたよ」

「ここは任せてください」


 そういって、ルナは小さな杖を構える。


「ポイズン・スピナー」


 杖の先端から、何か針状のものが飛び出す。

 そして、それは音もなくゴブリンの体に突き刺さる。

 すると、ゴブリンは苦悶の表情をしたと思ったら、そのまま地面に伏してしまった。


「ゴブリンが……」

「私のポイズン・スピナーは暗殺専門。ゴブリン単体なら最強の攻撃です」

「なら、最初からそれを使ってゴブリン倒すって思考にならないんですか?」

「だって、大量に使うと疲れるじゃないですか」

「あぁ、そうですか……」

「でも、門番を倒す程度なら問題はないです」

「なら、せっかくなのでやってもらいましょうか。中は僕が倒します」

「分かりました。ここは協力体制と行きましょう」


 そういって、ルナはすぐさま門番のゴブリンを倒してしまう。

 いよいよ相賀は洞窟の内部に侵入する。

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