第21話 討伐クエスト

 相賀は道具屋で魔石をいくつか購入し、そのまま宿に戻る。

 宿に戻った相賀は、その魔石を自身のグローブと短剣に装着する。

 相賀は、一度その性能を確かめようと、外に出てチェックしようとした。

 人気のない裏路地に出向き、そこで魔石による身体強化を行ってみる。

 相賀はグローブを握り、念を込めた。

 すると、魔石が光り輝き始める。

 そのまま垂直にジャンプした。

 すると、素の状態よりも高く、建物の屋根までジャンプすることが出来た。

 これがどういう原理で働いているのかは、相賀は知るところではないが、それでも身体強化できることには変わりはない。

 続いて短剣を装備し、軽く素振りをしてみる。

 相賀の目に見ても分かる通り、切り込みがものすごく早くなっている。


「これならいける……!」


 相賀は謎の自信を手に入れた。

 こうして夜は更けて、翌朝。

 十分に睡眠を取った相賀は、支度をする。

 この日は予定通り、オオアカグマを討伐するからだ。

 宿のロビーで待ち合わせていたローランたちと合流する。


「やぁマサヤ。よく眠れたかい?」

「ばっちりね」

「緊張は?」

「少ししてる」

「大丈夫だ。何かあっても俺たちがいる」

「……うん」


 そういって、ローラン一行は前日下見に行った場所に向かう。

 この日も、この峠を使う行商や一般人はおらず、非常に静かな通りになっている。


「これから峠に差し掛かる。もしかすると、オオアカグマはこの通り道に出てきているかもしれない。気を引き締めていこう」

「分かってるぜ」

「もちろん」

「了解」


 そういってローランは剣を装備する。

 それに釣られるように、ガイバーやキャロル、そして相賀が武器を装備する。

 一行は細心の注意を払いながら、峠に突入していく。

 峠に入ってしばらくしたところで、ローランが止まるように指示を出す。

 そして地面をジッと見つめる。


「どうかしたか?」


 ガイバーが聞く。


「オオアカグマの足跡だ。しかもかなり巨大だ」

「昨日見たやつかな?」

「おそらくそうだろう。まわりに小さな熊の足跡が複数ある。子連れの熊に間違いない」

「こんな所にまで出てきているの?」

「そうなるな。もしかするとこの峠で遭遇するかもしれない。注意して進もう」


 その言葉に、相賀はグローブを握りなおす。

 周囲の音に気を配りながら、ゆっくりと進んでいく。

 すると、一行の進行方向の右側から音がする。

 全員、一斉にそちらの方を向いた。

 その場所は森の中のようだ。


「……キャロル」

「分かってる」


 ローランに言われる前に、キャロルは魔法を使って索敵をしていた。

 しばらく魔法の展開に集中して、その後魔法の展開を止める。


「いるわね、オオアカグマ。大きいのが1匹、小さいのが2匹」

「おそらく目標のオオアカグマだな。マサヤ、早速だが囮を頼めるか?」

「分かった。こっちに出せばいいんだよね?」

「そうだな」


 確認を済ませたところで、相賀は昨日貰った身体強化の魔石を使う。

 これに自身が買った魔石を合わせて、強い相乗効果を持たせる。

 そのまま森の方へ、軽くジャンプする。

 すると、軽々と木の枝の所までジャンプすることが出来た。

 そのまま、木の枝を使って移動する。

 すると奥の方で、何かが動いているのを確認した。

 相賀は木の枝に乗って、その動いているものを確認する。

 それは昨日見たオオアカグマであった。

 近くには子供の姿も確認できる。

 相賀はオオアカグマをおびき寄せるため、わざとオオアカグマの前に出る。

 そのまま親のオオアカグマの顔面に一発、強いパンチをお見舞いした。

 不意の攻撃だったため、オオアカグマはそのパンチをモロに食らう。

 そして一瞬ののち、けたたましい叫び声が周囲に響き渡る。

 相賀は一目散にローランたちのいる場所に向かう。

 相賀の後ろを、猛スピードで追いかけるオオアカグマ。

 そのまま峠の通りまで出てくる。


「どいて!」


 森から出た瞬間、キャロルが叫ぶ。

 相賀は最後の木を下に蹴とばして、軌道を変える。

 その直後、相賀のいた場所にオオアカグマが突進してきた。

 そこを目掛けて、キャロルが叫ぶ。


「ルクシール・ショット!」


 青色に燃え盛る炎が、キャロルの杖から放たれる。

 ものすごい勢いで飛ばされた青色の炎は、見事にオオアカグマに命中した。

 まともに食らったオオアカグマは悲痛な叫び声を上げる。


「次は俺の番だな!」


 そういってガイバーはディザストハンマーを振り上げる。

 そのまま飛び上がり、オオアカグマの脳天目掛けて振り下ろす。

 だが、先ほどの攻撃が効いているのか、のたうち回っているように見える。

 そのせいか、振り下ろしたハンマーの攻撃は当たらずじまいだった。

 しかしガイバーは、地面に叩きつけたハンマーをそのまま反転させて、思いっきり振り上げる。

 その攻撃は見事にオオアカグマの顎をとらえた。

 クリーンヒットしたオオアカグマは、そのまま気絶状態に入る。

 その隙を逃すまいと、ローランがオオアカグマの首元を素早く掻っ切った。

 オオアカグマの首はそのまま飛んでいき、その体は力なく地面に横たわる。


「やった……のか?」


 思わず相賀はその言葉が出る。


「もちろんだよ。依頼達成だ」


 相賀たちは安堵の歓声を上げる。


「マサヤ、初めての討伐だったがよくやった。これで立派な冒険者だ」

「ありがとう、ローラン」


 そういってローランは相賀に手を差し伸べる。

 相賀はその手を取り、握手をした。

 こうして、相賀の初めての依頼は達成されたのだ。

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