第三話 思い出

幼稚園 小学校と同じだったが

君と親しくなったのは

中学になってからだったね


同じクラスで 同じ班になり

文化祭もいろいろやったね?


そうだ!

壁新聞は君の家を借りて

深夜までやったっけ

楽しかったね


高校は別だったが

同じ電車だったね

朝は会わなかったが

帰りは同じ時間に乗っていて

時々 駅から家までの間

おしゃべりをして帰ったね


二人共 同じ大学に進学して

学部は違ったが

やはり電車で会って一緒に帰ったね


その頃 君は切ない恋をしていて

手助けできない自分は

見守ることしか出来ずにいたよ


その恋も打ち砕かれたと知ったのは

君が結婚して

何年も経った頃だったね


幸せだったかい?

健気に笑う君が切なくて

他に何も訊けなかったけれど


真綿でくるんだような

優しい笑顔を見てるだけで

こちらまで温かい気持ちになったよ


一匹狼の自分のことを

いつも気に掛けてくれてたね

「ありがとう」と「またね、またね」

可愛い声で何度も言ってくれた


優しい笑顔の影で

君はこっそり

心配事を抱え込んでいたんだね

話を聞くと「不安なの」って


最近は「心配」が口癖だったね?

その頃には、もう病んでたのかい?

痩せ細っていく

君が気になっていたんだ


また連絡するね!

メールの言葉は合図のように

いつもこの言葉で

〆られていたのに

次の「また」は無くなってしまった


Sちゃん!

もう返事もないのか?

もう姿も見られないのか?

その笑顔も 可愛い声も


もうこの世に存在しないのか?


自分は大声で泣くことも出来ず

じわりじわりと襲ってくる哀しみに

必死で耐えようとしている


君の行ったのは 

天国だと信じてる



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