第5話

『メイドちゃん。私ね。大人が大嫌いなの』

『なんで大人が嫌いなんですか?』

『平気で嘘をつくから。私を捨てた親もそうだったし。許せないの』

『………お嬢様』


メイドちゃん。

なんであんなに悲しそうな顔をしたの?


……………………。

………………。

…………。


「ぅ……」

「大丈夫? 疲れてるみたいだから、もう帰ったほうが良いよ」

「……うん」


公園の入口で、男の子は一度振り返り


「ありがとう。お姉ちゃんが僕を助けてくれたんでしょ? じゃあね、バイバイ! また明日」

「…………」


ありがとう?

私が、アナタやアナタの大切なママを苦しめていたのに?


ありがとう……ありがとう…ありがとう。

ありがとう? ありがとう?? う~ん。


悩んでいたら、夜。私の悩みを象徴するような淡い夜だった。私は、口笛を吹いて人間を今も苦しめている元凶を公園に呼び出した。

バイ菌を撒き散らして、人間を『悪い風邪』にした黒いバッタ。


草むらから現れたその姿は、全くの別物になっていた。


「モンスターみたい」


人間の果てのない欲を餌にして、ブクブク太った醜い体に変異している。

主である私まで、その毒で犯そうとするバッタを無理やり捕まえて、元の潰れた姿に戻した。


これで人間を苦しめていた病気も治るはず。


「……痛いなぁ」


暴れたバッタに噛まれて、両手が傷だらけになっていた。



「……こんなボロボロの手じゃ、プリンが食べれないよ。…………ほんと」



人間なんか、大キライ。

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