第4話


私は、この公園が好きになった。

遊んでいる子供を見るのは、楽しかった。

子供は、私が知らない世界を教えてくれる。


砂場でいつも遊んでいる男の子。


「ゴホッ! ……うッ……んん~」

「どうしたの?」

「か…ぜ。ゴホッ、ゴホッ! さっ、最近、みんな風邪なんだ。ママも風邪で大変そう…で……ゴホッ、ゴホッッ!!」

「ふ~ん。風邪かぁ」


ベンチに座って、プリンを食べている間。

救急車が何度も何度も前の通りを過ぎていった。



次の日。


いつもサッカーをしていた男の子二人がいなくなった。


また次の日。


今度は、おままごとをしていた可愛い女の子が、いなくなった。


またまた次の日。


「……………」


またまたまたまた次の日。


あんなに子供たちで賑わっていた公園。ついに砂場で遊ぶ男の子だけになった。


「ぁ………っはぁ」

「みんなは?」

「寝…てる。病…院……。ゴホッッ! ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ……はぁ……はぁ」

「ふ~ん。あなたは、病院に行かないの?」

「ママも…。ママも風邪なのに……。ゴホッ、ゴホッ! がっ、頑張って仕事してるから……心配…かけられな…いから」



10個目のプリンを食べようとした時ーーー


ドサッ!


倒れて動かなくなった男の子。

私は、男の子に近づいた。すごく弱っている。


「あなた、死ぬよ」

「……死にた……く…な…い……ママ………」


男の子の目から溢れた涙が、乾いた砂を黒くしていく。


「そんなにママが大事なの? 代わりのママを探せばいいのに」

「ぃ…なぃ…」


見下ろす私の足を掴んで離さない男の子。左足が、焼けるように熱かった。


私の中にこの男の子の気持ちが流れこんでくる。ママをどれだけ好きか、大事に思っているかが分かる。



「………………」


なぜか、その場から一歩も動けなかった。

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